病院に着く。予め連絡してあったので受け入れはスムーズに行われた。

初めての入院のときはそれなりに医師も妹の話を聞いている風な対応を

見せていたが、今回はほとんど話も聞かない。

 

「移動中、光を当てられるなどの嫌がらせを受けた」

 

というバカバカしい妹の訴えがむなしく診察室に響く。

むしろ、僕よりも妹の方がここに来た意味を身にしみているようで

大きな抵抗もなく比較的、素直に入院という方針に従った。

 

こうして二度目の妹の入院が決まった。

 

おそらく、この病気が完治しないのだろう、ということは僕も母も

父も頭で理解している。しかし、少しでも状態が好転して来ると治る、という

期待を抱いてしまう。

 

あれだけ病気の気配すら見えない島田くんだって再発したのだ。

でも、それはまだまだ先の話。

このときは、僕らは言いようのない徒労感に襲われた。

経験値だけがレベルアップして入院に至るステップがスムーズだったことも

ショックだ。

 

こんな経験値は嬉しくもなんともない。今まで僕や母は何をしてきたのだろう。

診察室に妹を入れると、早々に医師や看護師に妹を任せ深夜の病院の

廊下に出る。静かで蛍光灯の薄暗い廊下で、僕の会社のスタッフが3人、

手持ち無沙汰で立ちすくんでいる。

 

廊下の窓からぼんやりと照らされて浮かび上がるように閉鎖病棟が見える。

今やあれが妹の指定席だ。

 

スタッフが診察室から出てきた僕に近寄ろうとしたが躊躇うのが分かった。

僕が泣いていたからだ。

 

大人になってから、そうそう泣くことはない。ここ3年で泣いたのは3回、

全て妹に関してだ。

 

大人になれば、泣くことはあってもそれはもらい泣きやひとすじの涙だったり

大人しく泣くのだろう、と思っていたが、いつも僕は号泣している。

妹に関わっていると感情が日常よりも大きく揺さぶられ、その揺れ幅が

想像以上で抑えが効かなくなるのだ。

 

しかしそんな感傷にひたれるのもほんの僅かの間だけだ。

 

前回は入院するまでが、エキセントリックだったが

今回はこれからが大変だ、と後で思い知らされる。

 

入院に慣れていたのは僕たちだけでなく妹も同様であった。