妹がオペラシティで「錯乱した」と報告を受けてから僕たちが彼女を

「保護」するまで、約5時間、何をしていたのか?それはまず警察からの

電話で少しずつ明らかになる。電話は神宮前の派出所からだった。

偶然、実家に居合わせた僕が受話器を持っていた。

 

「そちらのお嬢さんの所持品らしき物が落とし物として届けられています。

 それと…。お嬢さんがこちらの派出所にいらして、帰るお金がないと

 仰って、交通費をお貸ししたのですが…」

 

警察官を名乗る人物は確かにこう言った。意味が分からない。

 

「申し訳ありませんが、いまいち事情がつかめません。

 妹とあなたは実際、お会いになったのでしょうか?

 会ったから妹はお金をお借りしたのだと思うんですけど、

 そのとき、届けられた落とし物を妹は受け取らなかったの

 でしょうか?それと、らしき物ってなんでしょう?

 妹の物とはっきり分かるわけではないんですか?」

 

妹の行動はいつも謎だらけだ。

 

「そうですよね。ちょっといろいろありまして…。順番が

 ごっちゃになってすいません」

 

警察官によると、まずふらふらの妹が手ぶらで現れた。

財布を落としたので交通費を貸して欲しいと言う。

様子がおかしいので尋ねると気分が悪いだけだ、と言って

交通費だけ借りて姿を消したらしい。

 

すると、その後、続々と妹の落とし物らしき物が

派出所に届けられた。続々と、というのはどうも

妹の手にあった時には鞄1つに収まっていたものが

派出所に届いた時点ではバラバラになっていた、ということだ。

かばん、財布、免許証、筆記用具、書類、Tシャツ、ビスコ、

といった具合に。

 

ウエハースに続き久しぶりにビスコという響きの言葉を聞いた。

どうして妹は幼児性の高いお菓子ばかり持ち歩いているのだろう?

 

想像するに妹はオペラシティから表参道まで歩き、その周辺で

荷物をばらまいた。

しかし財布や免許証はともかく、ビスコが単品で落とし物として

届くものだろうか?

 

それが届いたのだ。それは妹の会社の社長、真田さんからの

メールで明らかになった。