本郷三丁目にお気に入りの鰹節専門店がある。鰹節ラブな店主が

熱く語る鰹節は削り立てでとにかく旨い。薄く削ったものは

炊きたてのご飯にのせ、醤油をかけ頬張ると口の中で鰹節がとろけ

風味が広がる。絶品の鰹節だ。

 

厚切りの鰹節で出汁を取り、具材を入れ、さあ永平寺の味噌の出番だ!

段ボールを開けると大きな樽が入っていた。その樽の蓋を開ける。

ところが入っていたのは味噌ではなかった。

 

入っていたのは塩…。大豆…。麹…。何かが書かれた紙が一枚。

すぐにはこの事実が何を意味するのか?理解ができない。

その紙にはこう書かれていた。

 

「美味しい味噌の作り方」

 

味噌の作り方が書かれた説明書だった。やられた気分が部屋中に充満する。

僕はガスの火を止め、説明書に目をやる。必要なものの中に2キロの重石とあった。

一人暮らしの男の部屋に2キロの重石が常備されているものだろうか?

 

時刻は夜7時。

僕はタクシーに乗り渋谷のドンキホーテに向かう。こうなったら

手作り味噌をつくってやる!

 

しかしさすがのドンキホーテといえども2キロの重石なんて扱っているだろうか?

つまりは2キロの石だろ。石を扱う店なんてそうそうない。

妹の行動はいつも予想外だが、ドンキホーテで重石は扱っていないのでは?という

予想は当たっていた。

 

ない。

 

僕は1キロのダンベルを2つ買い、またタクシーに乗り家に戻る。

 

時刻は夜8時

いよいよ永平寺の手作り味噌作り開始だ。

乾燥した大豆が入った袋を取り出し、再び説明書に目をやる。

 

「大豆をよく洗い、水に10時間〜15時間つけましょう」

 

僕は大豆をよく洗い、大きなボールに水を入れ大豆を浸し、やることを見失う。

12時間だとしても次のステップに取りかかれるのは明日の朝8時だ。

 

僕は夕飯も食わずふて寝した。