島田くんはフランクだ。誰とでも仲良くなれる。いじめられた経験もなく、

中学では生徒会長になり、大学でも慶応でサークルを作り

常に仲間の中心にいた。誰かに嫌われるというような経験もない。

 

僕も島田くんを面白い奴だと思っているし好きだ。

病気にすらならなければ、逆に深く島田くんのことを考えなかったかも

しれない。

 

しかし、うがった見方をしてみれば、常に彼の居場所はセンターだ。

自己顕示欲で人を押しのけ無理矢理センターに立つ訳でもなく、

総選挙の必要もない。

誰かに押される訳でもなく、彼はごく自然に意識することもなく、センターに

立つ。彼は常にセンターから隅っこの人間を眺める。おおらかで

優しい男なので隅っこにいる奴にも気軽に話しかけるが、

それはたぶん、隅っこにあえている人間の気持ちを理解している訳ではない。

 

その隅っこにいるのがフリーという立場ではないか。

確かにフリーは働けば働くだけ儲かる。しかし常にその場限りの便利屋と

いう側面があり、同じスタッフであってもどこか部外者で

持続的に1つの会社のコンセプトや方針を共有することはない。

 

多少仕事ができても、会社の方針に口を出したり、出過ぎるフリーの

スタッフよりも、控えめで、寡黙に駒のごとく働いてくれるフリーの人が

好まれるように思う。優秀なフリーの人はそれを知っている。

隅っこにいるが不必要な責任を追わされることもなく、与えられた仕事さえ

きちんとできれば、仕事の依頼は後を立たないから、好きなときに仕事が

出来る、生活に困らなければやりたくない仕事をする必要もない、

といった辺りがフリーのメリットだろう。

 

でも島田くんはフリーの立場を超え、その会社でもセンターに立ってしまった。

外連も悪意も意識すらなくそこにいるから、島田くん自身が自分で

そこが自分の居場所でないことに気付いていない。

 

 

僕と倉持社長は顔を合わせて話をしているわけでもないのに

お互い苦笑いしている気がした。

 

「要は、立ち上がってもいない仕事を勝手に張り切って走らしちゃったって

 いうことなんですよ。」

 

僕は島田くんの自宅に向かう途中でありながらすっかりその足が

重くなるのを感じた。こんな単純で簡単なことが本質的なところで

分からない。苦笑い級の先走りなのにどこか悲しさが残る。

 

おそらくここまでの経緯はは病気のなせるものじゃない。

スイッチは入っていなかったと思う。

 

スイッチは、センターに立っていた自分が舞台から落とされた客席の

足下に落ちていた。自分がなぜそこにいてはいけないのか?

自分を舞台から見下ろす人々を、センターに立つ会社の社長を眺めながら

呆然と立ち尽くし混乱する島田くんの足下にスイッチがあった。

 

しかし、これは今の島田くんに言うべき話じゃない。

しかし広がり始めた不審人物拡散網をどうしていいかも分からない。

 

何をどうすればいいか、さっぱり分からない。