時間が経つのが遅い。早く島田くんを病院に連れて行きたい。

気が変わって愚図りだされでもしたら厄介だ。

島田くんはベランダでタバコを吸う度に

 

「これは織部さんと石橋貴明さんが仕組んだドッキリじゃないですよね?」

 

と聞いてくる。妻が言うには、島田くんは「みなさんのおかげです」を

予約録画しているくらい好きなのと、ダウンタウンが芸人にドッキリを

仕掛ける企画があって、それを見てごっちゃになっているのでは?

ということらしい。

 

不可解な発想だが、案外、妄想は浅いところから発せられている。

 

「おひょいさん、なくなりましたねえ」

 

死んだ有名人に敏感なのもこの病気の特徴だろうか?

彼の本棚にはマイケルジャクソンとデビッドボウイと仁義なき戦いの

ムック本、エレファントマンのDVDガ並んでいる。

人の趣味をとやかく言うつもりはないが共通項はすでにこの世にいない人と

いうだけなので凄く違和感がある。

 

時間が近づくにつれ、島田くんの落ち着きが失われていくのが分かる。

タバコを吸いに行く間隔が極端に短くなる。

 

「少し落ち着きなさいよ。体にも悪いし吸い過ぎよ!」

 

妻が注意するが、島田くんは一向に意に介さない。それどころか

 

「お前は病気のことが分かっていない!ちゃんと勉強しろよ!

 病気になったことがない奴が病気の人の気持ちが分かるわけない!」

 

妹もかつて同じようなことを言った。なんとなくスイッチ人間の常套句の

ように思える。

 

確かに僕らは病気になったことがない。だから真に彼らを理解できないのかも

しれない。でも僕らだって言いたい。

 

「君は病気になった人の家族になったことがあるかい?

 病気になった人の家族になったことがない奴にその家族の辛さが

 分かるわけない。」

 

ロジックは一緒のはずだ。言いたいけど残念ながら言えない。

 

ようやく病院に行く時間がやってきた。