「山崎かなこ」なる人物の携帯にかけると明らかに若い女性が出た。

山崎さんは高校生だという。妹とはとあるイベントで知り合い、

それ以来、いろいろと相談に乗ってもらっているらしい。

 

「どっちが?どっちの?…ですか?」

 

僕は比較的真剣に聞いたつもりだが、山崎さんは怪訝そうに

 

「私が悩み事の相談に乗ってもらっていたんです」

 

そう答えた。山崎さんは一週間前から連絡がとれなくなった妹を心配し

あえて妹の親族のフリをしたことを僕に謝罪した。

 

話をしたところ素直で礼儀正しく真面目そうな女子高生だったので

僕も素直に事情を話し、入院したことと病院を教えた。

 

「状態が良くなったら見舞いに行ってあげてください。

 妹も喜びます。」

 

結果的にこれは大失敗だった。僕が犯した大きなミスだ。

後日、起こる不可思議で人を傷つける事件の原因はここにある。

 

しかしそのことにまだ気がついていない僕は、妹の部屋を片付けるという母を

手伝いに妹の住むマンションに行く。

ここはいつ来ても沈鬱な気分にさせる。今回の最大の目的は犬のムツゴロウを

放ったらかしにし、モモンガのムーを実家に置き去りにした妹が

現在、可愛がっているというハムスターのミーの救出だ。これで実家では

小動物が二匹飼われることとなった。

 

台所に2つ段ボールが置いてあることに気がつく。宅急便で届いたまま

開封されていない段ボール。送り主は和歌山と福井だ。

それぞれの段ボールの側面にはそれぞれ文字がプリントされている。

 

和歌山の段ボールには「南高梅の手作り梅酒」

福井の段ボールには「永平寺の手作り味噌」

 

おそらく妹が現地から取り寄せたものだ。僕は「南高梅」と「永平寺」という

いかにも特産品という言葉の響きに魅せられた。

 

「これもらっていっていいかなあ」

「いいよ。どうせそう簡単に退院できないし」

 

母の許しを得て味噌と梅酒をゲットだ。妹の部屋にきて初めて得した気分だ。

今夜はおいしい鰹節で出汁を取り、みそ汁を作ろう!

梅酒は毎日寝酒に一杯やることにしよう!

 

僕は帰り道、なめこと豆腐を購入した。