サイトウくんは奇跡の人だ。
僕は「素直に妹が謝れば良い。」と思っているが
僕が妹の友人ならもうかかわり合いになりたくない、と思う側だ。
その前にまず妹のような人と友人になりたいなんて思わない。
サイトウくんは妹に一方的に婚約を破棄された。理由は妹曰く
「方向性の違い」というバンドの解散みたいだった。
僕なら思い出したくない、記憶から消し去りたいような女性関係だ。
それがまた関係が復活した。今度は婚約ではなく付き合い始めたのだという。
サイトウくんは強靭な精神力の持ち主だ。そして我慢強い。
さらに温厚で妹に忠実なのが、妹にとっては都合が良いのかもしれない。
実は僕はサイトウくんを誉めていない。どこかで馬鹿なんじゃないか?と
疑っている。そしてこんな関係がいつまでも続く訳がないと思っている。
父や母はどちらかといえば歓迎していた。
「でもさ、ちょっと無茶苦茶じゃない?突然婚約したり破棄したり
別の人間と婚約したり3日後に婚約者が変わったり、入院して退院した直後に
付き合い始めるって…」
父が即答する。
「日本人なら誰でもいい」
よほどインド人なのに「スズキ」や「ハンダ」で懲りたのか、両親の妹の
交際相手に対するハードルは倒れて、無いに等しい。
しかし彼の存在は妹の心の安定に大きく貢献してくれた。
病気から垣間見える滅茶苦茶ぶりが後退していくのが母にも分かるという。
「ただ、あの子は病気が治っても、元の性格が悪い」
この頃の母の口癖だ。