退院早々、父のせっかちが炸裂した。
「お前はいつから働くんだ?働かざるもの食うべからずだぞ!」
退院したとはいえ、まだまだ通院の必要がある精神疾患の患者に
いきなりこの突っ込みはさすがにないだろう。この病気は時間がかかる。
ゆっくりじっくり取り組まなければならないと思う。妹がキレた。
「こういう病気にはそういうプレッシャーが一番良くないのよ!
あんたがそういう風だとちっとも良くならないわ!」
この2人は誰かが入院し退院するとつねに激突している。母が胃がんで全摘した後も、
無事、退院した母の目の前で、なぜか母の葬式について激論を交わし
母を呆れさせた事がある。
妹は確かに良くなっていると思う。なによりも病識ができた。
病気である事を認めたと言う方が正確かもしれない。しかし病気である事を
認めた妹のオリジナルの個性の方に問題があった。
妹は常に病気を盾にするようになる。なにか注意しようものなら
「それは病気に悪い」「病気が加速する」「私を悪くさせたいのか!」
それどころか、父や僕の存在そのものが病気に悪いと言って
ことあるごとに排除しようとする。おかげさまで僕は妹が実家にいる間は
出入り禁止になってしまった。
かってインドに行く前
「たぶん僕は一生、妹に恨まれることになる気がする」
僕が父母に言った時
「そんなことない。病気が治ればあの子だって分かるはずだし、
まず私たちがそんなことにはさせない」
父と母は珍しく口を揃えて言った。しかし退院早々裏切られた。
父は退院早々の喧嘩ですっかり妹とコミュニケーションをとることを
面倒くさがった。母は妹の決まり文句「病気が悪くなる」ことを恐れ
妹の方針に異を唱えることをしない。
結局、妹は自分の周りから都合の悪いものは排除し
自分だけが住みよい実家を実現させた。