村岡先生は島田くんを過去に統合失調症にした本人にも関わらず、

そんなことはおくびにも出さず、島田くんがそもそも統合失調症ではない、との

疑いを示した。

 

驚きを心の底に収めると納得できるものがある。僕が島田くんに始めてあったのは

10年前。島田くんはその2年前に発症し、つまり発症の2年後には僕に会っていた。

そのときには、もう島田くんが精神疾患を患っていた、

なんて誰も思わなかったわけだ。

 

入院を必要とする統合失調症って、そんなに簡単に治るの?

 

あるいは治るのかもしれない。

 

しかし発症後10年を経て島田くんは「統合失調症が再発した」と言うが

双極性感情障害の妹よりめちゃくちゃ度が低い。いやあっちこっち

思考が空飛ぶ傾向はあるが、妹の修羅場に比べれば、執着が極端に強いのと

プライオリティのあり方が間違っているにすぎない。

 

村岡先生が言う。

 

「とりあえず双極性感情障害の疑いってことで

 紹介状書きますから、大きな病院でテストを受けてください。」

 

「とりあえず」ってなんだ?僕の妹の病気は「とりあえず」でつけられてしまうほど

簡単か?まったく納得できないし整合性が合わない。少し興奮気味に

村岡先生に抗議する。

 

「先輩の方がお疲れですね。眠れていますか?先輩には睡眠薬出しましょうか?」

 

僕は有無を言わさぬ村岡先生の発言に押し黙った。このままでは僕まで

病気にされてしまう。この部屋はなんなのだろう?

 

しかし僕の横に座る患者はすっかりこんがらがった糸がほどけた顔をしている。

結局それが大事だ。