島田くんも妹同様、毎日電話がある。僕には

 

「電話が鳴ると煩わしいので、かけないでほしい」

 

と言うくせに昼夜を問わず電話をかけてくる。

 

「一人で買い物に行くのが恐いので付き合ってもらっていいですか?」

 

正直、嫌だが仕方ない。駒沢大学の駅前で島田くんは待っている。

 

「呼び出しちゃってすいません」

 

すまないなんてきっと思ってない。手にはコンビニ袋を持っている。

今日もまた彼はエンドウ豆スナックを買った。

 

「何を買いたいの?」

「夕飯の支度と計算ドリルが欲しいんです。」

 

夕食の買い物は分かるが計算ドリルの意図が分からない。

 

「頭が働かないんで、きちんと機能するように計算ドリルとか

 やっておいた方が良いと思うんです。」

 

まともな人が頭を働かせるために小学生の計算ドリルなんてするだろうか?

僕たちは書籍店へと向かう。僕たちが店内に入ると店員が「いらっしゃいませ」と

どこの店でもありがちな光景が広がる。見慣れないのは島田くんの対応だ。

店員が「いらっしゃいませ」と言う度に「どうも。こんにちわ」と挨拶している。

 

もともと初対面の僕に握手を求めるほど、島田くんはフランクな人間だが、

いささかフランクに過ぎる。僕が知っている島田くんはいちいち店の人に

挨拶なんかしなかった。

 

「小学生の計算ドリルがほしいんですけど」

「何年生ですか?」

「いやいや、僕は小学生ではないですよ。見れば分かりますよね?」

 

会話が噛み合っていない。いや島田くんが一方的にコミュニケーションを

放棄しているかのようなやり取りだ。

 

「何年生用のドリルか?を聞いてるんだよ」

「ああ、4年生くらいかなあ」

 

店員が「少々お待ち下さい」と言う。島田くんは店員の対応が気に食わないらしい。

 

「あいつ、絶対病気ですよ」

 

島田くんに言われたくない。お前は今から小学4年生の計算ドリルに

チャレンジするんだろ。