島田くんの執着心は変なときに現れる。人には得手不得手があって
例えば僕には優しさはないが気遣いは出来るように思われ、島田くんは
優しいが人に対する気遣いが欠けていた。
僕の家で飲もうと彼を誘った時、彼はツマミを入手してくるという。
島田くんは豚足が好きで、マトン肉が好きで、山羊のチーズが大好きで
つまり癖のあるものが好きだ。この島田くんの大好物3部作は僕が苦手な
ものばかり。
しかし僕の家に来た彼がぶら下げていたビニール袋に入っていたのは
その3部作だ。「嫌いなものはないか?」とか「マトンは大丈夫か?」とか
聞くものではないか?と思う。僕がどれも嫌いだと言うと、
変人にでも遭遇したかのように、瞳孔を広げビックリしたような顔をし、
その後、表情が悲し気に変わる。
変人はそっちだろう!お願いだからそんな顔で僕を見るなよ!そう突っ込みを
入れたくなる。
彼がまだ僕の会社にいた頃、仕事で土井たか子さん、塩川正十郎さん、
江藤隆美さんにお話を聞く仕事を一緒にした。3人とも亡くなってしまったが
当時も一線から退かれ、我が社の階段を登るのも一苦労だ。
僕は島田くんに大御所3人のテーブルに茶菓子を置いておくように指示する。
お話を聞く段になってテーブルに置かれた島田くんセレクトが目に入った。
頑固揚げ。かりんとう。さきいか。金平糖。
大御所の歯には難敵だ。どれも固い。
大物政治家は人物も大きいからそんなことで誰も文句は言わないが
実際、誰も手をつけず僕はホッと胸を撫で下ろした。みな歯は大事だ。
なぜ島田くんは歯によろしくないものばかりセレクトしたか?
それはそれが全て彼の好物だからだ。
大量に余った固いものシリーズを島田くんは嬉しそうに持って帰った。