僕の話のどこを切り取るとそういう話になるのか分からない。
「せめてパソコンだけでも持って帰りたい」
「ダメ。また買えばいい。もう一度言うよ。僕の言うことは絶対。
僕が薬を飲めといったら飲む。分かる?真っ直ぐ空港に行く。分かる?」
妹はハンダのことは一切口にしなかった。心配する風もなく、忘れてしまったかの
ようにも見える。
「それができないならここから出せない。納得できるなら山田さんの前で
誓約書を書きなさい」
そんなものが何の役に立つのか分からないし、普通に頭を働かせれば
逃げる事も出来たかもしれない。しかし薬のせいか、捕まったときのトラウマか、
妹の思考はまるで子どものようだった。
「分かった」
僕も山田さんも医師もその素直さに驚いた。医師も少し強い薬を
服用させておけば、そうそう日本に着くまで暴れることはないかも
しれないと言う。退院の許可が下りた。明日、迎えに来ると妹に約束する。
「トランクを買ってきて。上等のやつがいいわ。インドのはすぐ壊れるから」
入れるものなんかないのに、と思うがつまらぬことで躓きたくないから
明日までに揃えると約束し一旦妹と別れた。僕たちは医師に連れられ部屋を移動する。
院長室でこれまでの精算をするはずだった。しかし請求書を見てたまげた。
「98万円!?」