翌日、病院を訪れる前に大使館に寄る。一等書記官の山田さんも
同行してくれるというのだ。
「一昨日も行ったんですが、病院側は退院は厳しい、と言っていました。」
山田さんは僕たちの車に同乗し病院へと向かう。住所は分かっているのだが
なぜかなかなかたどり着けないのがインドだ。住宅側に番地の表示がないから
建物のどれが203番地なのかが分からない。
人に道を聞いても「知らない」と言いたくないのか、みないい加減なことを
教えようとする。
すると針金をゴムで覆った網目の壁の破れ穴を発見する。
かってシンさんとくぐった穴だ。
「あそこ!あそこの裏側に病院がある!」
前回、穴をくぐっておいて正解だった。
無事、病院に到着する。前回の大捕り物がよみがえり対面には緊張したが
病室に入ると妹は看護師と折り紙を折っていた。退院できないほどだと
聞いていたので拍子抜けする。折り紙は山田さんが差し入れてくれたのだという。
「あ、お兄ちゃん、どうも。」
妹の驚きのなさに驚いた。まあ、自分であれだけビックリするような
展開を生み出し続けていると驚き機能が麻痺するのかもしれない。
今日は状態がいいと医師が言う。これなら話が出来そうだ。
慎重にしかし明確に伝わるよう言葉を選ぶ。
「ここを退院させてもいい。しかし条件がある。
真っ直ぐ空港に行き、日本に帰ること。
成田から真っ直ぐ僕が指定する病院に行き診察してもらうこと。
もしあなたが病気ではないというのなら、そこで証明された後、
自由の身になる。
その病院に着くまでは全て僕の言うことを聞くこと。
不満があっても僕の言うことは絶対だと思って従うこと。」
妹はすこし考えた後、言った。
「その前に借りたマンションに行っていい?」
全然、伝わっていない。