「埒があきませんから、妹さんとハンダを一緒に日本に帰してしまうって
いうのはどうでしょうか?」
通常、インド人が日本に来る場合のビザは時間を要すが、今回は特別に
すぐ出すと言う。僕には大使館の常識が分からないが、信じられない
ことを言い出すものだと思う。さらにインドで結婚したとしても
それは日本では無効だ、つまり妹は日本ではシングルなんだ、とも
山田さんは説明する。そうかもしれないが、一体これは何を説明されているのか、
全く理解ができない。
「それで成田に着いたあと、ハンダをどうすればいいんですか?」
「お疲れさまっていう具合に、そこで放置でかまいません。あとは
妹さんだけを連れて帰ってもらえれば」
インドの大使館ってすごいな。やはり尋常ではない日本人の対応に
慣れっこになっているのだろう。考えることに融通が利きすぎている。
しかし考えるまでもなく僕は断る。妹がいる部屋に戻り、
また平行線の話し合いが続く。5時間が過ぎた。
これ以上話し合いを重ねても無駄だ。僕は明後日にはインドを発たねば
ならない。もう妹の件で10日間は仕事を休んでいる。
僕は中座し大使館の受付前で国際電話をかける。
父と母の許可を貰うためだ。もう受付のインド人女性も勤務を終え
そこには誰もいない。壁にはmissingと書かれた行方不明の日本人の
ポスターが幾つも貼られている。
僕は決断した。