ホテルのオーナーは自身の事務所にいた。名前はもはや忘れてしまったが

ひげをたくわえ、赤い帽子をかぶせカートに乗せたらゲームのキャラクターに

ピッタリの人物だ。

 

妹はなぜこの人物と知り合ったのか?ホテルともめた妹は一時、デリー警察の

お世話になる。そのとき、日本語の通訳としてインド警察に雇われていたのが

このホテルのオーナーだという。主だったホテルに出入り禁止となった妹は

この人物が経営するバックパッカー用のホテルに10日間、滞在する。

この間の滞在費も払っていないので払ってほしい、とオーナーが

手書きの明細を見せた。シンさんが「検討して後で処理する」と答える。

 

オーナーによると妹は出入り禁止になったホテルで野良犬の世話だけでなく、

フロントで「旅に疲れた客を癒す」と言って日本の童謡を突然歌い出したり、

それを制ししようとするボーイをナイフで脅すなど、やりたい放題だった。

 

シンさんとオーナーはヒンドゥー語で話していたが傍らにいるシンさんの

お父さんとお兄さんがなにやら苦笑いをしているように見える。

僕だけが訳も分からず、笑えない。

 

気になってシンさんに尋ねる。

 

 

「あのネ、妹さん婚約者変わった」

「変わった!?

 だって昨日僕が成田から旅立つ前夜、電話で彼女はスズキツトムと

 結婚するって言ってたよ。」

 

インド人なのに名前がスズキツトム。大使館員も会った東洋系の男。

 

「それが変わった。別の人になった」

「別の人?え?

 そんなことあり得るの?この2日間で婚約者って変われるもの!?」

「そうネ。おかしい。でも変わった。ハンダサトシに変わった。」

「ハンダサトシ?それは日本人なの?」

「いいえ。インド人」

 

どうして次々とインド人なのに日本人の名前が出て来るのか?