会社の後輩、島田くんは確かに少し変わっている。そのキャラクターを
僕の会社では好感を持って受け入れられていた。
島田くんは自分の好きなものはみんなが好き、だと思っている。さきイカや
羊羹、かりんとうが大好きで僕の会社に設置されたグリコの100円
お菓子ボックスにリクエストしバランスよく収められていたはずのお菓子群を
羊羹、さきイカ、かりんとう専用ボックスに変えてしまった。
彼は隙っ歯で、きっと歯が丈夫でない。にもかかわらず羊羹、さきイカ、
かりんとうを好み、食しては歯につまらす。島田くんのデスクには
糸楊枝が常備されている。
デスクは会社でもいちにを争うほど散らかしており注意しても「はいはい」と
言うばかりで一向に片付かない。僕は島田くんに進行中のプロジェクトの
相談に彼のデスクへと行った。僕は彼のデスクに左手をつき、もたれかかるように
彼に話しかけていると、デスクについた左掌に軽い違和感を感じた。
何かついている。掌を見ると僕の手に4本の糸がへばりついていた。
使用後の糸楊枝だ。自分の歯を奇麗にしてくれた功労者の糸楊枝たちを
眺めるのが彼の日課だという。僕が左手についた糸楊枝を島田くんの肩に
なすりつけると…
「わあ汚い!」
とおびえるように僕を見る。汚いと言う感覚はずれていないらしい。
たまに大便を流さない奴が我が社にいるが、僕は島田くんだと思っている。
彼は遠慮とか配慮とか、微妙に気を使わなければならない事が苦手だ。
僕が書店で本を購入してくると、僕のデスクまでやってきて
「本、なに買ったんですか?」
と聞く。その後の展開の正解はたぶん…
「ちょっと見てもいいですか?」
だと思うのだが、彼は言わない。購入した僕がまだ開いてもいないのに
勝手に本をペラペラめくりながら
「これはなかなか良い本だ!うん、なかなか面白い」
と感想を一人呟く。ずうずうしいことこの上ない。本を貸しても返ってこないか、
返ってきても付箋がぺたぺた貼ってあったり、気に入ったセンテンスに蛍光ペンで
印がついていたりする。
僕の部屋に遊びにくるとずかずかと僕のDVD棚へと侵入。
やはり「見ていいですか?」の許可はない。
勝手にDVDを手に取り「ほお!」とか「へえ」とか「うんうん」とか
独り言を呟きながら、僕のDVDを発掘しまくる。おかげで隠してあった
エッチなDVDまで発掘されてしまった。
何かが欠落しているのだが、それを今まで病気だ、と感じた事はなかった。
むしろそんな彼のずうずうしく、デリカシーのない行動に突っ込みを
いれながら好意を持って受け入れてきた。
そんな島田くんが「統合失調症」だったという。妹の件とは全く別の意味で
ショックだった。しかし数年後、会社をやめた島田くんから「再発した」と
連絡をもらう。
僕は「妹のねじ」以外にも「後輩のねじ」という経験も持つことになる。