「今度はインドへ行くって言ってる」
アフリカの次に妹が打ち出したのはインドへの視察旅行だという。
今度は妄想ではなくすでに旅行社で手続き済みだ。聞くと3泊5日なので
僕は少し安心していた。母にも…
「いい気分転換になるんじゃないの?3泊5日なら普通の海外旅行じゃん!」
躁鬱病の人間を海外にうっかり行かせてしまうと、恐ろしいことに
なるとは、全く考えていない呑気な僕がいた。
「いつから行くの?」
「4日後って言ってる」
全てが思い立ったら吉日の妹の行動。オーガニックコットンの視察で行き先は
ニューデリー。今回の「海外視察」は随分、具体的で航空機の往復便も
泊まるホテルもはっきりしている。正直、妹に振り回されて僕ですら
疲れ切っていたし、母を考えると尚更だ。
「少し休めると思ってさ。送り出してやったら?」
妹がいない間に僕にはやっておきたいことがある。たびたび出てくる
妹周辺の実在する人物にコンタクトをとる。妹ノートを進め、妹が
病気である確信の積み上げをする。下手に妹に知れるとどんな反撃を
くらうか、分かったもんじゃない。
こうして妹はインドへと旅立った。成田で見送ったのは
母と妹の団体の副代表の川崎さん。
しかし妹が3泊5日で帰ってくることはなかった。