僕たちが妹を病気だ、と断定できなかった大きな理由の一つは彼女の

オリジナルによるところが大きい。強烈な父の遺伝子をもっとも受け継いで

いたのが妹だ。

 

僕は彼女が8歳のときに一人暮らしを始めたので彼女のことをよく知らないが

母からこんな話を聞いたことがある。

 

妹が恨んでいる中学教師がいる。

彼女は高校受験で第一志望の高校に落ちた。しかしその他の高校には

合格していた。にも関わらず妹は職員室で自分の不幸と不運を嘆き、

号泣したという。その激しさに担任の中学教師はこう言った。

 

「全部落ちてる子もいるんだから、その子たちのことも考えなさい」

 

彼女はこのことをいまだに恨んでいる。

 

母が胃がんで入院してたとき、実家では何もしない妹が僕が洗濯した母の

衣服を病院に持っていき看護師たちにこう言った。

 

「ウチに残っているのは男ばかりでこういう時、役に立たず大変です」

 

僕は入院中は実家に戻り家事を担当していた。役に立っていないのは

父と妹とである。

よく僕と母は、父と妹はよく似ていると陰口を叩く。

典型的な「失敗は人のせい、成功は自分の手柄」タイプだ。

 

元々がこういうキャラクターだから病気とオリジナルの境界線が

判断しづらい。今ある妹の言動の全てが病気、とも言いづらい。

それが僕の曖昧な知識と相まって判断を鈍らせていた。プロの医師で

あれば見分けがつくのだろうが本人が病院に行ってくれないのだから

どうにもならない。

 

僕は妹の主治医がいるという浜田山のクリニックを104で

調べ電話をかける。僕は妹がうつ病でそちらの医師が完治したという妹の

証言と今の妹の状況を電話にでた女性に説明したが、

聞こえてくる「ええ」という相槌があきらかに訝しげだ。

 

「あの…ウチは産婦人科ですけど…」

 

妹に関わると僕まで明後日の方向に向いている。おそらく受け付け担当であろう

電話の女性にダメを押された。

 

「そういうことであれば専門の病院で見てもらったらどうですか?」

 

適切なアドバイスだと思う。