妹の事業計画書は不幸な人救済の演説的お題目と協賛者、そして社会起業家とは?
といういかにもウィキペディアからコピペしましたという定義が書かれただけの
ものだった。具体的な事業計画が全く書かれていない事業計画書で
最も気になったのは協賛者の欄だ。会社名の後ろに書かれた代表者の名前が
フルネームだったり苗字だけだったり、それがカタカナだったり。
「この人の苗字、漢字で書いてみて。」
「今日は名刺を持ってきていないので分からない」
「この人のフルネーム言ってみて。」
「だから名刺持ってきてないって言ってるじゃん。」
「あのさ、僕はお世話になっている人の名前や会社の社員の名前言えるよ」
「あんたみたいな零細企業とは訳が違うの!」
僕の心の奥の細道でひたひたと薄い殺意が近寄ってくる。
「あんた300万円融資してくれる社長がいるって言ってたけど、それホント?
このご時世、こんな事業計画書で300万ポンッと出す人なんている?」
「だからあんたのとこみたいな吹けば飛ぶような会社と違って儲かってる会社は
ボランティア事業にも熱心なのよ!」
確かに僕の会社は吹けば飛ぶような零細企業だが、
今は妹の存在を吹いて飛ばしたい。
「ポンっと出してくれてもう受け取ってるのよ!」
突然、辞めた前の会社の社長が突然辞めた社員に気前よく300万円出した、
個人の金だから借用書や領収書は存在しないという。眉どころかまつげどころか
顔中に唾つけたいくらいの話だ。その社長が出したと言う額が300万円で
妹が欲しがっている妹名義の通帳の中身も300万円。しかしどちらの主張にも
なんの証拠もないからいつまで経っても水掛け論のようになってしまう。
仕方がないので話題を変える。この際だから確かめたい事を全部聞いてしまおう。
「あんたうつ病になったって聞いたけど、もう大丈夫なの?」
「うん。主治医に完治したって言われた」
「え?病院行ってるの?」
「うん。完治するまでは行ってたよ」
これも絶対、眉唾物ならぬ顔全体唾物だ。