母も狩猟民族好戦タイプだ。横暴な父に黙っていたわけではない。
夫婦ケンカの激しさによく近所のおばさんやおじさんが割って入っているのを
覚えている。父と母を両サイドに僕は中央で近所のおばさんの膝に座り
テニスの試合観戦のようにボールの行方を眺めていた。その際、よく母が
父とケンカの際に言っていたキーワードがなぜか大人になっても忘れることがない。
「トルコ風呂」「愛人」
幼稚園児の僕を連れ母が家出を繰り返すものだから、僕は幼稚園に行った記憶も
あまりない。母は強烈なキャラクターではないが気の強さでいえば父よりも強い。
「あなたがいるから我慢している」
とよく僕は言われたが、僕の順調な反抗期への成長に伴い、夫婦喧嘩から
父子喧嘩に時代が移ると、母は反撃に打って出た。とにかく父を認めない。
父の言うことにはまず否定から入る。父のやることには必ずケチをつける。
胃がんを患い胃を全摘した後も丸くなるどころか、先鋭化し現在でも
その反撃は続いている。僕の方が丸くなり、あまりに父がかわいそうに
なる時もあるが、基本「トルコ風呂」と「愛人」なので仕方ないと
思っている。
息子からみても夫婦愛が希薄な母はその分、子どもには愛情をそそいだ。
低く見積もっても平均点以上の愛情はあったように思う。それは僕も妹も
同様に。むしろ息子の僕でやらかした失敗を母なりに考え、妹は自由に
育てられたようにもみえる。妹が二十歳になるまでは少なくとも僕が
失敗作で妹は順調だったはずだ。
しかし基本は嵐のような家族なので妹も気性難。そもそもが狩猟民族好戦タイプ。
友人や彼女に家族を会わせる際、
「僕が家族の中で一番おとなしい」
と言うと皆、何の冗談か?という顔で笑うが、家族と会うと本当だ!という顔で
笑っている。
「お前に何か言う権利はない!」
「あんたは黙ってなさい!」
「お兄ちゃんは口ださないで!」
おおむねこれが家族の僕に対するスタンスだ。
自分で提案した家族会議が気が重い。