(1)グローバリゼーションの定義

 

今日から、今年のSFC(慶應義塾大学総合政策学部・環境情報学部)対策を本格的に始動する。

 

まずは、SFCを受験するにあたって、ぜひ知っておかなければならない用語の解説から入る。

 

タイトルを「SFC対策講座」と銘打ったが、国際学部や社会系学部で小論文を使う人は今回の記事を必ず読んでほしい。

 

第一回は、「グローバリゼーション」。

 

「グローバリゼーション(globalization)」は「グローバリズム(globalism)」とも「グローバル化」とも言われる。

 

「グローバリゼーション」を簡単に定義すると、「地球規模で政治・経済・文化が一体化すること」。

 

これは、「ボーダレス(borderless).」と近似的な意味で用いられることが多い。

 

「ボーダレス.」とは、国境を越えてモノ・ヒト・カネ・情報が行き来すること。

 

背景には自由化と情報化がある。

 

情報化とは、インターネットが普及して、スマホやパソコンひとつで世界中の人や情報にアクセスできるようになった状態を指す。

 

ICT(情報通信技術)の進展は目覚ましく、2020年には5Gの運用が始まり、AIやVR(仮想現実)、  AR(拡張現実)、  MR(現実と仮想現実の融合)の技術が続々と起こってきている。

 

 

(2)自由化とは

 

自由化とは、自由貿易の進展のこと。

 

第二次世界大戦後、アメリカを中心として自由貿易体制の構築が進められた。

 

自由貿易とは、関税を引き下げ、輸入制限などの非関税障壁を撤廃して、商品(モノ)や資本・為替(カネ)の国際取引を活発化すること(貿易の自由化、為替の自由化)。

 

労働者も協定を結んだ国の間で自由に働くことができる(労働移動の自由化)。

 

日本は多くの国・地域とFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を結び、さらには、安倍政権は外国人労働者の新しい在留資格である「特定技能」を2019年に導入し、5年間で最大34万5千人の受け入れを表明し、2020年から受け入れを開始している。

 

こうした自由貿易を進めるために、国際分業が広がっている。

 

国際分業は先進国間では、お互いにそれぞれ競争力のある工業製品を輸出しあい、得意分野に特化して工業化を進めることができる。

 

日本では自動車や家電製品、半導体などの技術を生かした産業が根付いて、こうした付加価値の高い商品を輸出することで、経済成長をもたらすことができた。

 

しかし、その反面、得意分野が重複する先進国間での国際競争が激化することになる。

 

日本の大手家電メーカーのシャープが2016年、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業グループによって買収された事例は大きな衝撃を与えた。

 

さらに、近年急速に経済発展を遂げた韓国もテレビなどの家電製品市場で日本を追い上げ、大きな脅威となっている。

 

一方、発展途上国は原材料や食料を輸出し,工業製品を輸入するといった垂直的分業では、工業製品のほうの付加価値が高いため先進国と発展途上国の格差が固定されてしまう南北問題を引き起こすことになる。

 

こうしたグローバリゼーションに対して反対する動きが世界で起こっている。

 

1999年にシアトルで開催されたWTO閣僚会議(第3回世界貿易機関閣僚会議)では、反グローバリゼーション運動が盛り上がった。人間の鎖によって会場が包囲され、開会式が中止となる事態に追い込まれた。

 

(3)参考資料:フラット化

 

慶應義塾大学総合政策学部2012年

 

資料1

①  グローバリゼーションは、まったく新しい段階に入っていたのだ。『レクサスとオリーブの木』と本書(注:『フラット化する世界』)を併読するなら、グローバリゼーションが大きな三つの時代として存在していた、という偉大な歴史論を理解してもらえるはずだ。コロンブスが航海に乗り出し、旧世界と新世界の間の貿易がはじまった1492年から1800年頃までが、最初の時代に当たる。これをグローバリゼーション1.0と呼ぼう。これが世界のサイズをLからMに縮めた。グローバリゼーション1.0は、国家と腕力の時代だった。つまり、グローバリゼーション1.0における変化の重要因子、世界の統合の過程を推進する原動力は、物理的な力――腕力、馬力、風力、さらには後世では汽力(蒸気動力)――だった。国家がそういったものをどれだけ持っていて、どれだけ創造的に用いるかに左右されていた。この時代の国家や政府(宗教、帝国主義、あるいはその両方の組み合わせによって成り立っていることが多かった)は、壁を打ち壊して、世界をつなぎ合わせ、世界の統合を図ろうとした。グローバリゼーション1.0の重要な課題は、次のようなものだった。自国をグローバルな競争やチャンスにどう適合させればよいか? 自国を通じてグローバル化し、他の人々とうまく力を合わせるには、どうすればよいか。

 

②  次の大きな時代区分、グローバリゼーション2.0は、大恐慌と二度の世界大戦によって中断したものの、大まかにいって1800年から2000年まで続いた。この時代、世界のサイズはMからSに縮まった。グローバリゼーション2.0における変化の重要因子、世界の統合を進める原動力は、多国籍企業だった。多国籍企業は、市場と労働力を求めてグローバル化した。共同出資によるオランダやイギリスの会社と産業革命の発展が先鋒をつとめた。この時代、前半の世界の統合は蒸気機関と鉄道による輸送コストの軽減が、後半は通信コストの軽減―電報、電話、パソコン、人工衛星、光ファイバー、初期のワールド・ワイド・ウェブが原動力になった。この時代にわれわれはまさに世界経済の誕生と成熟を目にした。大陸から大陸へと大量の商品や情報が移動することによって、世界市場が生まれ、生産と労働の両方の世界的な取引がそこに生じた。ハードウェアの分野での飛躍的進歩―最初は蒸気船や鉄道、そして電話やメインフレーム・コンピュータといったもの―が、このグローバリゼーションの時代の原動力であった。この時代の重要な課題は、次のようなものだ。自社は世界経済にどう適合するのか? どうやってビジネスチャンスを自社のものにするのか? 自分の会社を通じてグローバル化し、他の人々とうまく力を合わせるには、どうすればよいか? (中略)

 

③  グローバリゼーション3.0は、世界をSサイズからさらに縮め、それと同時に競技場をフラットにした。また、グローバリゼーション1.0の原動力が国のグローバル化であり、2.0の原動力が企業のグローバル化であったのに対し、3.0の原動力は個人がグローバル化し、グローバルに力を合わせ、またグローバルに競争をくりひろげるという、新しく得た力なのである。また、個人や小集団が簡単にむらなくグローバル化することを可能にしたのは「フラットな世界のプラットフォーム」という現象である。一つヒントを差し上げよう。フラットな世界のプラットフォームは、パソコン(誰でも自分のコンテンツをデジタル形式で生み出すことを突然可能にした)、光ファイバー(個人がほとんどただ同然で世界中のデジタル・コンテンツにアクセスするのを突然可能にした)、ワークフロー・ソフトウェアの発達(世界中の個人が、距離に関係なく世界のどこからでも同じデジタル・コンテンツの共同作業ができるようにした)といったものが集束して生まれた。こんな集束は、誰も予期していなかった。2000年頃にそれが起きた。世界中の人々が、ある日突然、個人としてグローバル化する絶大な力を持っていると気づいた。世界中の個人が競い合っているのを、これまで以上に意識しなければならなくなり、しかもただ競い合うのではなく、協力する機会もまた飛躍的に増えた。その結果、誰もがこう自問できるようになったし、また自問しなければならなくなった。私は個人として、現在のグローバルな競争やビジネスチャンスのどこに割り込めばよいのか? 一人で他の人々とグローバルな共同作業をするには、どうすればよいのか。グローバリゼーション3.0がこれまでの時代とまったく異なるのは、サイズを縮小し、世界をフラット化し、個人に力を与えたことだけではない。もう一つの違いは、グローバリゼーション1.0と2.0の牽引力は欧米の人やビジネスだったという点だ。たしかに中国は18世紀も世界有数の経済大国だったが、グローバル化とそのシステムの改良は、欧米の国や企業や冒険家が主に進めていた。しかし時代が進むにつれて、この傾向はどんどん薄れていった。なぜなら、世界をフラット化して縮めていくグローバリゼーション3.0は、日増しに欧米の個人だけではなく、(非欧米、非白人の)多種多様な個人の集団によって動かされるようになっている。フラットな世界のあらゆる国々の個人が力を持ち始めている。グローバリゼーション3.0によって、多くの人々がゲームに直接参加できるようになり、あらゆる肌の色の人間が役割を果たすようになっている。(出典:トーマス・フリードマン著、伏見威蕃訳『フラット化する世界〔増補改訂版〕』日本経済新聞出版社、2008年より抜粋。文中の表現を一部分変更した。)

注. フラット化:世界のシステムが指揮・統制の垂直的なシステムから、世界の多様な人々の「接続と共同作業」の水平な仕組みに移行していくことをさし、インターネットを通して、世界のビジネススタイルが均一化してゆく傾向をさす。グーグルのようなプラットフォームが今後さらに世界のフラット化を加速させていく。

 

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