2009年12月、私は前立腺癌だと

告げられました。

 

 ステージ4で、余命一年くらいだとい

うのです。

 

 そして間もなく、歩けなくなってしま

いました。それから二つの病院に入院し

て、まず放射線治療を受け、続けて癌細

胞を除くためと下半身の麻痺を取り除く

ための手術を5回ほど受けます。

 

 当時私には、癌という病についての知

識がほとんどありませんでした。

 

 5年生存率も、ステージ4の場合、今

ほどのデーターはなく、30-50%く

らいという漠然としたものでした。

 

 どうしていいのか、まるで見当がつき

ません。何であれ、知識がないと、私達

はどうすれば良いのかさえ分からない、

闘うことが出来ないと、思い知ったもの

です。

 

 私は本や雑誌を読んだり、ネットを眺

めたり、癌について知ろうとし始めまし

た。

 

 現在、当時見かけなかった体験記も多

くなり、参考になる情報を知ることがで

きます。

 

 癌の生存率も、随分と良くなっていま

す。

 

 10年前、現在の生存率が示されてい

たなら、私の気持ちはとても楽になって

いたと思います。

 

 そうして闘病生活も、10年目に入り

ました。

 

 最近、ブログに、「今のところ、50

代前後に高リスクの前立腺癌を患って、

とても長生きできたという例を知りませ

ん。」という文章を見かけました。

 

 私は少なくとも、生きて、10年目に

入っています。複数の医師から、余命一

年と宣告されても生きている、こういう

私の例を知ってもらうのも悪くないと考

えました。

 

 そしてこの不安の中の十年で感じたこ

と、考えたこと、その時々の機微を、小

説の形で語りたいと思うようになりまし

た。

 

 このブログは治療の体験を基に、二組

の男女の恋愛模様を通して、生きること

や死ぬこと、社会のこと、などについて

物語として綴ったものです。

 

 長い物語になると思います。

 

 読んだ感想や批判、応援をいただけた

ら幸いです。