負けへんで!
  コロナ‼︎

  創作小噺シリーズ
      第27回



タイトル

《母の日》





娘、香里奈
「もしもし、もしもし、ママ、今日の母の日やけど、朝早くから新幹線で大阪に行こうと計画してたんやけど、子供は休みだけど、ふたりとも学校始まって、明日の宿題とかあるし、娘二人連れて福岡からの移動はリスクも多いし、なんかあったら困るからと、夫も反対するので」

「そら
やめといたほうがええ、もしものことがあったら、えらいことやから、連休終わってなんとなく、人の気持ちが緩んでいるみたいやから、やめといて、孫には会いたいけど、こんな時やから、やめたほうがええ。孫にはプレゼント買ってあるねんけどな」

「それだけ送っといて」

「あっ、そう、わかった」

「娘二人も、おばぁちゃんに会いたいって楽しみにしてたんやけど、ごめんな、今年はこんなことになって、おかぁちゃんは母の日が誕生日で、しかも、還暦やから、去年からパァーッと盛大にしよう言うてたのになぁ、ほんまに、まさかこんなことになろうとは、ごめんな、そのかわり、古希の時は盛大にしよう」

「古希って、
10年も待つんかいな、今回の感染騒ぎが終わってからでも」

「そんなん、いつになるかわからへんし、間延びしておかしいわ、ごめんね、娘のプレゼント待ってるで」

「かなんな、あっ息子や、もしもし」

息子、清一
「もしもし、お母さん、今日の母の日、僕らの家族は東京やろ、ちよっと出られそうにないねん。無理でけへんから、僕だけでもとおもたけど、嫁さんと、息子から、止められてな、自分らに感染するような、危険なことせんといてて、行くつもりはしてたんやで、やめとくわ」

「そうやな、あんたが感染したら、家の中でなかなか隔離も難しいから」

息子
「せっかく、母の日と、誕生日、還暦が重なって、めでたいから、なんか立派な祝いを買いにと思ったんやけど、デパートも開いてないねん。悪いなあ」


「楽しみにしてたのにな、あら、次男から電話や」

次男、裕司
「もしもし、母ちゃん、おめでとう、母の日に誕生日、それに還暦、めでたいなぁ、昼くらいに、そちらへ行こう、とおもてたんやけど、飛行機飛んでないねん。
ケーキも買ってたんやで、しゃあないから
こっちで食べとくわ」

(ガクッ)
「むこさんから、電話や
もし、もし」





「もしもし、どうやった?子供らは?」

母、妻
「誰も来られへんねん」

「そうやろな、この時期は難しいわ。
それで
いま、ロイヤル帝国ホテルに来てるねんけどな、今日の母の日な、子供らみんな来られへんようになったやろ?
しゃあないから、せめて二人だけで、ちょっと豪華に夜は、ホテルの最上階でフランス料理でも食べて、二人で祝おうと
思ったんやけど、昼はやってるけど
夜は
店を閉めてるらしい。
残念ながら
今年の母の日は
何にもなしや」




「クッソー
コロナのバカヤロウ‼︎
どないしてくれんねん!
ええ加減にせえ‼︎」


「もしもし」
「電話、投げつけたら、壊れてしもた」




おわり