負けへんで!コロナ!
創作小噺シリーズ第16回
タイトル
《スーパーマーケット》
店員
「まもなく開店でございます。新型コロナウイルス感染拡大防止のために、当、ロイヤルWスーパー、守口市古川橋店も、みなさまにいろいろご迷惑をおかけいたしておりますが、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
【三密】を避けるために、2メートル感覚でお並びいただいて、おります。
ご入店の際も間隔をあけて、入っていただきます。
また
入店後はフロアに矢印がございますので、出来るだけ、それに沿って進んでいただきます。
お買い上げの品物は一度手にされたら、戻さないように、ご協力よろしくお願い申し上げます。
それでは、
おまたせいたしました。
開店でございます。
入店の際は検温をさせていただきます。
それと
マスク着用で
ない方はご入店できませんので、あらかじめご了承くださいませ!
それでは、順番に、入り口三箇所ございますので、誘導させていただきます。
どうぞお入りください。
本日は
ご来店ありがとうございます!」
店員
「あっ、お客様」
客
「な、何?」
店員
「どうぞこちらへ、次のお客様どうぞお入りください、お客様、ちょっとこちらへ」
客
「なんやのん?検温したで」
店員
「分かっております。
それは大丈夫なんですけど、
すいません、マスクをされてませんので」
客
「ああ、マスク?
ごめん、マスク忘れたんよ、
すんまへん、こうして鼻と口ずっと手を当てておくから、手製のマスクで堪忍して」
店員
「手で押さえられましても、困りますよ」
客
「先に、マスク買いに行くから」
店員
「売ってないですから」
客
「ないのん?こんな大きなスーパーでマスク置いてないて、恥ずかしいで」
店員
「品切れで、今、ないんですよ。
マスクされてないと入れませんので」
客
「ええっ、入られへんのん?えらい長いこと並んだのに」
店員
「すいません規則ですので」
客
「そやから、ワシ、手製のマスクで」
店員
「いや、手を当てられましても困ります。恐れ入りますが出直して、いただきまして」
客
「出直すて、ワシとこ、遠いねん。それに1家庭ひとりということで、今日はワシの番で家族代表してきてるから、マスクを取りに帰ってたら、遅なって昼飯に間に合わんがな、ずっと手を当てておくから」
店員
「それは、だめですって」
客
「あっ持ってた、持ってた」
店員
「持っておられたんですか?それは良かったです。では、していただけますか」
客
「はい、はい」
店員
「あの、えらい変わった小さいマスクですが、それ眼帯じゃないですか?」
客
「分かる?ちょっと、ものもらいが出来て、いやもう、ほとんど治ってるので、外してたんやけど、これで、ワシ、口を小さくしとくから、隠れてるやろ?」
店員
「いやいや、それおかしいですよ。
わかりました。
私の予備のやつ、差し上げますので」
客
「ほんと、すんまへんな、帰りに返しまっさ」
店員
「返さなくてけつこうですから、どうぞこれ、特別ですよ、はい、ビニールから出して、ビニールいただきます。
針金の入ってるのが上で、そうそう、鼻にしっかりあてて、下はアゴのところへ、ずっと伸ばして、鼻が出てます」
客
「鼻出てる方が、息がしやすい」
店員
「困ります。しっかり上抑えて」
客
「ありがとう。助かりました。優しい店員さん、この名札がお名前?」
店員
「そうです。そうです」
客
「お名前が、谷一茂さん?私、中林茂太郎いいますねん。シゲの漢字一緒やがな。おおきに」
店員
「いえ、いえ、特別ですよ。では、お買い物、なさってください」
客、中林
「おおきにどうも、すんません」
店員、谷
「お客さん、中林さん」
客、中林
「へっ?茂太郎です」
店員、谷
「そんなことはどうでもいいんです。さっきから、カゴに豚肉入れては戻して、鶏肉入れては戻して、困るんですよ、あれこれ触られると」
客、中林
「すんません、今日買うもの、息子の嫁が紙に書いてくれましてんけど、それどこへいれたんか、分かりませんねん。
忘れたんかなぁ、電話かけますわ、公衆電話は?」
店員、谷
「ないです。当店には、携帯は?」
客、中林
「忘れたんよ」
店員、谷
「よう、忘れる人やなあ。わかりました。どうぞこちらへ」
客
「どこへ?警察へ突き出すんと違うやろな?」
店員、谷
「なんでですのん、どうぞ、店の裏にある事務所の電話使ってください。間違って買って帰ったら困るでしょ?」
客、中林
「そうですねん、すんませんなぁ、ちゃんと紙に書いてもろて、ああっ」
店員、谷
「どうしました?」
客、中林
「書いてもろたんは前回で、買い物当番は明日でしたわ、さよなら、あっ、マスク返しときます」
店員、谷
「結構です。ありがとうございました。次のご来店をお待ちしています」
大野
「いかがでした?」
中林
「抜き打ちでね、今日、朝から、5店舗回ったけど、客が多いからね、応対が大変だなぁ、
どうしても、外に出るなとなると、一人買う量も多いからね。それから、大野君」
大野
「なんでしよう?中林部長」
中林
「守口の古川橋店の谷って社員、なかなか臨機応変で優秀だった。来週から生野区店の店長にしとけ!」
おわり