上方落語に
東の旅というネタ
がある
この中に幾つかの話が
あって
僕が師匠から初めてつけてもらった噺は
発端
から
煮売屋
だった。
そのあと七度狐へと繋がる
結構
面白い噺だと思う。


いわば民話みたいな話だが
色々
情景が浮かんで面白い
ただ都会に暮らしていると
なかなか
イメージが湧かない

噺家がイメージできなければ
お客様に伝わらない
今の若い落語家は
そこを
雰囲気でやりきってしまう
ギャグも多いから
笑いで
乗り切ってしまう。


昔の旅を
味わえない
から
仕方がないが

僕は
計画した
いまから
52年前

手甲脚絆にわらじ履き
振り分け荷物を持って
歩いて
伊勢参りの旅に出ようと


旧なんば花月の前からの
旅だった。
幾つかの
新聞社が取り上げてくれた。


6日予定したが
5日で着いた。

この道中には
いろんな話がある
とにかく
歩いた。

昔はわらじ履きだったが
そんなに
持たない
だから腰に10足ほどぶらさげて
歩いて
履き替えては
道ばたに捨てた。
もともとわらで編み込んでいるから
自然に戻って行く

いまはもう
やることはないが
七度ぎつねは
好きな噺だし
初めて聞いた米朝師匠の
七度狐
噺家への決心がついた噺だ

歩いたから
田んぼや畑の
光景がよくわかる

あれをやってよかった。
もう出来ないが

やってよかった
許してくれた
師匠に感謝だ

僕の落語の原点になった。

これから一年後には
忙しくなったが
どんなに忙しくても
苦にならなかった。
いつか歩いたことにくらべれば
屁でもなかったからだ