きっとジョナサンは意地っ張り
リチャード・バック・著/五木寛之・訳/新潮文庫
これはカモメを主人公にした寓話であり、誤解を恐れず一言で言うと、異質な性質を持った個人が群れに対して生き方を教え諭す物語です。
しかしなんだかその思想が私には独りよがりのものに思えて、特に主人公ジョナサンが「飛行技術がうんぬん」というくだりは、なんとなくまるで車の免許を取って夜な夜な峠に走りに行き、エンジンがどうだタイヤのへたりがどうだと延々と話し合う若者達を見ているような、少し滑稽な気分でした。
しかし、これを読んで改めて思うのは、やはり人間には“群れ性”が必要なのだということ。
毎日毎日「向上心」という名の下に、自分に対する批判と叱責にさいなまれながら生きるには、人間はあまりにも弱すぎる。
うまいもの食べてシアワセ感じて生きるのもいいじゃないか。
ホタテの貝柱のカルパッチョとかうまいじゃないか。
テクニック論。
石井裕之・著/フォレスト出版
アマゾンでトップセラーになっていたので購入。
人に信じさせる本ですが、胡散臭くてめいっぱい信じないまま購入しました。
それが読み進めていくとビックリ。極めて心理学的な、論理的な文章構築でした。
たぶんオレオレ詐欺の犯人もこんなのを読んで勉強してたりするんじゃないかな…と勝手に想像したりしつつ。
チャプター4のコールドリーディングを日常で利用する方法は少々無理があるように感じましたが、書いてあることは確かに間違いじゃない。
どんなことにでも言えるんですが、とにかく自分は他人に影響を与えうる存在なのだと信じて、余裕を持って本書のテクニックを実践したならば、きっと大きな結果を得られると思います。
ロンドンの爆破テロについて。
毎日睡眠時間削って勉強して、給料上がるようにがんばって、昼飯削って彼女にダイヤの指輪プレゼントして、落ちてきた30センチほどのコンクリート片が頭に当たって死んじゃう。
でも、そこから得られた結論は「じゃあがんばるのやめよう」なんて厭世的な言葉でも「だからこそ毎日をきちんと生きよう」なんてくだらない言葉でもない。
『ただわれわれは毎日を粛々と生きるしかない』ということだ。
仕事はダルいけど無職よりはなんぼかマシ。
変なもん食って腹は壊したけど、食えないやつらよりはなんぼかマシ。
嫌なことは多いけど、死んじゃうよりはなんぼかマシ。
マシを積み重ねて生きていくしかないのだ。
退職金ビジネスが今熱い!
山田泰章・著/税務研究会出版局
コンサルタントとして経営者と相対したときに、キラーアイテムとなり得る言葉がいくつかあります。
「おたくの会社、もっと税金削れますよ」
「おたくの会社、もっと経費節減できるのでは?例えば社会保険料ですが・・・」
「おたくの会社、退職金は大丈夫ですか?」
一番最後の要求に答えられる本がこれ。
例えば、退職金を下げるための必要用件である『相当の理由』。
それには確定拠出型と呼ばれる日本版401kへの移行などが必要になるんですが、それらコンサルタントとして必要な知識は身に付くし、逆にバカ・退職金コンサルを見抜く指針ともなる強い内容となっています。
でもちょっと難しいのも確か。入門書としてはお勧めできないけど、独立社労士・税理士さんには強力にプッシュしたい本です。
慶次は今もどこかにいます。
隆慶一郎・作/原哲夫・絵/集英社
室町末期から安土桃山時代。戦乱が豊臣秀吉によって平定され、最終巻では関が原の戦いまでを描く。この時代を描くとどうしても豊臣秀吉派か徳川家康派かに分かれるが、花の慶次はかなり中立的である。
どちらの人物もそれなりに魅力的に描かれていて嘘がない。(改めて書くまでもないが、人間とはある面では正義であり、またある面では究極の悪なのだ。)
やっぱりジャンプの漫画。男なら燃えないはずがないストーリーに仕上げてあり、読んでるとうっすら汗ばむほどです。
「戦場で傷だらけになったきたねえツラだ。だがそれがいい」などはもう名言集に載せるべき言葉だと個人的に思う。
とにかく面白いので読んでみましょう。
でも時代小説好きの人は腹が立つのでやめましょう。
星の王子さまは今もどこかにいます。
サン=テクジュペリ・作/内藤 濯・翻訳/岩波書店
あまりにも有名なサン=テグジュペリの名作「星の王子さま」。
王子さまはいろんな星をめぐり、さまざまな人と出会いますが、その中でもいちばん印象に残っているのは、四番目の星の『実業屋』です。
「でも、そのたくさんの星、どうするの?」
「どうするかって?」
「ああ」
「どうもしやせん。持ってるだけさ」
「星を持ってるんだって?」
「そうだよ」
<中略>
「でも、星を持ってて、いったい、なんの役にたつの?」
「金持ちになるのに役だつよ」
「金持ちになると、なんの役にたつの?」
「だれかが、ほかにも星を見つけだしたら、そいつが買えるじゃないか」
※P.66~67より引用。薄字部分のみ。
この部分を読むたびに、自分の残りの人生がひどくつまらないもののように思えて切なくなります。
でも、救いなのは王子さまに悲壮感が感じられないことです。
王子さまはただ淡々と純粋な視点で目の前の『現象』に問い掛けていきます。
やがて王子さま(サン=テグジュペリと同一視すべきかもしれない)はぬけがらになって(死んで)しまいます。そのとき王子さまは何を思っていたのでしょうか・・・。
読むたびに、読む年齢によって違う感想を持てるのがこの作品のすばらしいところ。
みなさんも読み直してみては・・・?
21世紀を担う若者たちについて。
藤子・F・不二雄/小学館コロコロ文庫
あの名作21エモンです。
私はアニメの方が好きなんですが、改めて漫画を読むとまた趣があっていいもんです。
全体の雰囲気としては、いい意味でかなり壊れたストーリーになっています。
アニメがまともなのか漫画が異常なのか…とにかくこれをそのままアニメ化するのは難しかったんでしょうね。
だって主人公が…
このバカ面ですもんね・・・。ほっぺた赤いよ・・・。おてもやん
ですな・・・。(いい意味で←いい加減苦しい)
余談になりますが、最近こんなふうに文庫化される漫画が多くて嬉しいんですが、なぜかドラえもんは「感動編」とか「ファンタジー編」とか変わったソートになっていて気に入りません。
漫画文庫の存在意義は、昔々の子供の頃に買ったボロボロになった漫画を、新しく買い直す機会になるところだと思うんです。
未収録作品も全て収録した本当の完全版文庫を、ぜひとも出版していただきたいものです。
陰惨な物語が好きなあなたに。
藤子・F・不二雄/潮出版社
時間世界を自由に行き来できる『タイムパトロール』。
主人公の並平凡(なみひらぼん)は偶然にもその一員となることになる。
タイムパトロールの使命のもと、西遊記の世界に行って自分が孫悟空になってみたり、はたまた第二次世界大戦中の世界で零戦パイロットを救ったりと男なら血沸き肉踊る展開が最高です。
“タイムパトロール”という言葉の響きから想像すると、犯罪者を逮捕するようなイメージですが、この作品のテーマは「人命救助」です。このテーマのおかげでストーリーに重厚感が生まれ、ともすれば陳腐になりがちな時間移動を扱った物語を救っています。
しかしこの漫画は結構残酷なんです。しかも北斗の拳のようなドラスティックな残酷さではなく、ピラミッドに閉じ込められたり、奴隷商人に売られたり、首を撥ねられたリ・・・陰惨です。