車がある。
これは、ほんの少しばかりの自由だ。
仕事にも行かず自分は何をやっているんだろう?
そう思わないこともなかったけど、今は少しだけ仕事から離れたいと思う。
我ながら、今までよく働いたと思う。
少しだけ休暇を貰っても悪くはないだろう。
「じゃあ、パスタ食べにいこっか?」
「異議なーし!」
車は、学生街をあっという間に抜けて郊外へ向かう。
景色が今まで感じたことのない速さで通り過ぎていく。
ドアのスイッチを押して、運転席と助手席の両方とも窓を全開にする。
どうやら後部座席の窓は開かないらしい。
風が流れ込んでくる。車内のチリなど一瞬で吐き出してしまうような。
体を撫でるのとはほど遠い、叩きつけるような風を受けながら、車は走っていく。
中央環状線に差し掛かり、右折して乗り込んだ。
更に車の流れが速くなった。
今、高速道路の下を走っている。地道で行く、という奴か。
「緑の看板やー」
「高速道路だって」
「お金取られる悪の道やん! 乗ったらあかんで」
「そうね」
そんな悪の道を避けて、地道を行く。
どうやって高速道路に乗ればいいのか分からないという、根元的な問題もあるし。料金所とか全然わからない。
横を白いワゴン車が追い抜いていった。後部座席にキティちゃんを満載している。
ナンバープレートが黄色なので、あれも軽自動車か。
そう思うと、なんだか追いかけたくなった。
(つづく)