子猫の唄 -3ページ目

週末の大通りを 黒猫が歩く
御自慢の鍵尻尾を水平に 威風堂々と
その姿から猫は 忌み嫌われていた
闇に溶ける その体目掛けて 石を投げられた

孤独には慣れていた 寧ろ望んでいた
誰かを思いやる事なんて 煩わしくて
そんな猫を抱き上げる 若い絵描きの腕
「今晩は 素敵なおチビさん 僕らよく似てる」

腕の中もがいて 必死で引っ掻いて
孤独という名の逃げ道を
走った 走った 生まれて初めての
優しさが 温もりが まだ信じられなくて

どれだけ逃げたって 変わり者は付いて来た

それから猫は絵描きと 二度目の冬を過ごす
絵描きは 友達に名前をやった 「黒き幸」”ホーリーナイト”
彼のスケッチブックは ほとんど黒尽くめ
黒猫も 初めての友達に くっついて甘えたが ある日

貧しい生活に 倒れる名付け親
最後の手紙を書くと 彼はこう言った
「走って 走って こいつを届けてくれ
夢を見て飛び出した僕の 帰りを待つ恋人へ」

不吉な黒猫の絵など売れないが それでもアンタは俺だけ描いた
それ故 アンタは冷たくなった 手紙は確かに受け取った

雪の降る山道を 黒猫が走る
今は故き親友との約束を その口に銜えて
「見ろよ、悪魔の使者だ!」石を投げる子供
何とでも呼ぶがいいさ 俺には 消えない名前があるから
「ホーリーナイト」
「聖なる夜」と 呼んでくれた
優しさも温もりも 全て詰め込んで 呼んでくれた
忌み嫌われた俺にも 意味があるとするならば
この日のタメに生まれて来たんだろう どこまでも走るよ

彼は辿り着いた 親友の故郷に 恋人の家まで あと数キロだ

走った 転んだ すでに満身創痍だ
立ち上がる間もなく 襲い来る 罵声と暴力
負けるか俺はホーリーナイト 千切れそうな手足を
引き摺り なお走った 見つけた! この家だ!

手紙を読んだ恋人は もう動かない猫の名に
アルファベット1つ 加えて庭に埋めてやった
聖なる騎士を埋めてやった

くだらない唄

得意の絵を描いてあげる 僕の右手と水性絵の具で
丘の花は黄色にしよう そのほうが見つけやすいから
「三日月が光る頃この絵と同じ丘で待ってるよ」
明日僕らは大人になるから ここで「思い出」をつくろう

神様見渡す限りに
きれいなタンポポを咲かせてくれ
僕らが大人になっても
この丘を忘れぬように

指切りをしよう 僕らにシワが増える前に
十年後の同じ日に またここで一緒に絵を描こう
「今夜中にこの景色を僕の右手と絵の具で閉じ込める」
十年後の同じ日までに ネクタイで迷わぬように

かみさま小さな2人に
今夜だけ魔法を唱えてくれ
僕らが大人になっても 
この丘を忘れぬように

少しだけ僕はせきをして
最後のひとふでに願いを込める
となりでアナタはうつむいて
タンポポでかんむりを

目が覚めれば メガサメレバ

かみさまぼくはふるえてる
背広もネクタイも見たくないよ
Tシャツに昨日しみ込んだ
タンポポの匂いが忘れらんない

きのうのおかでひとりきり
あなたがくるのをひたすらまった
くるはずないよわかってた

ぼくはまだふるえてる・・・

グングニル

グングニル


そいつは酷い どこまでも胡散臭くて 安っぽい宝の地図
でも人によっちゃ それ自体が宝物
「こいつは 凄い財宝の在り処なんだ
信じきった彼もとうとう その真偽を確かめる旅に出るとする

誰もが口々に彼を罵った デタラメの地図に眼が眩んでるって

容易く 人一人を値踏みしやがって
世界の神ですら 彼を笑う権利なんて持たないのに

そいつは酷い出来映えだが
こつこつ地道に作り上げた 自前の船 彼に取っちゃ記念すべき最初の武器
荷物を積み別れを告げ 朝焼けの海に帆を張った
堪え切れず掲げた拳 響き渡る閧の声
そいつは酷い どこまでも胡散臭くて安っぽい宝の地図
でも誰にだって それ自体が宝物
ホントにでかい 誰もが耳疑うような夢物語でも
信じきった人によっちゃ 自伝に成り得るだろう

誰もが遠ざかる 船を呪い出した
願わくば 高波よ悪魔となれ

容易く 覚悟の前に立ちはだかりやがって
夢の終わりは 彼が拳を下げた時だけ

死に際の騎士 その手にグングニル
狙ったモノは 必ず貫く

誰もがその手を 気づけば振っていた
黄金の海原を走る 船に向けて
自ら その手で破り捨てた 地図の切れ端を探して 拾い集め出した

容易く 自分自身を値踏みしやがって
世界の神ですら 君を笑おうとも 俺は決して笑わない
船は今 嵐の真ん中で
世界の神ですら それを救う権利を欲しがるのに