監督・脚本 ・編集 アッバス・キアロスタミ
撮影 ファルハッド・サバ
音楽 アミン・アラ・ハッサン
出演 ババク・アハマッドプール、イラン・オリタ、ホダバフシュ・デファイ
1987年度 製作国 イラン 上映時間 1時間25分
子供の教育や躾に対して、先生や親が絶対的な権力を持っていた時代の
イラク北部の村を舞台に、何度もノートを忘れて、次は退学処分だと先生に
脅されていた友だちのノートを、間違って持ち帰ってしまった主人公の少年が、
友だちの住所も分からなまま住んでいる村名だけを頼りに、ノートを届けるための
小さな冒険に向かう1日を描いた作品で、大人に翻弄されながらも、あてどなく
村を訪ね歩く幼い少年の健気な姿に、初めてお使いをさせた子供を見守る親の
心境になってしまい、まるで良質なサスペンス映画を観ているようです。
落ちは予想通りの展開でしたが、エンディング前の最後の5秒に用意されて
いた伏線の回収が鮮やかで、その目の覚める仕掛けに、一気に心を持って
いかれてしまった。
故アッバス・キアロスタミ監督が、半世紀前のイラン革命直後に製作した
本作は、映画に対する検閲を逃れるために主人公を子供にしたそうですが、
その事情を知っていれば、先生が何を象徴させたものかが理解できるでしょう。