ベルイマンの初期作品を満喫 | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

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「不良少女モニカ」

監督・脚本 イングマール・ベルイマン

原作 P・A・フォゲルストレーム

撮影 グンナール・フィッシャー

出演 ハリエット・アンデルソン、ラルス・エクボルイ、ジョン・ハリソン

1952年度 製作国 スウェーデン 上映時間 1時間32分

「道化師の夜」

監督・脚本 イングマール・ベルイマン

撮影  スベン・ニクビスト、ヒルディング・ブラド

音楽 カール・ビルゲル・ブロムダール

出演 オーケ・グレンベルイ、ハリエット・アンデルセン、ハッセ・エクマン

1953年度 製作国 スウェーデン 上映時間 1時間33分

 

イングマール・ベルイマンの初期作品「不良少女モニカ」と「道化師の夜」を

Prime Videoで続けて観ました。

どちらの作品も社会的弱者がどん底に落ちていく様を、冷徹な目で描いていますが、

その後の神の沈黙をテーマにした作品に比べて、主人公たちの目には、

微かに希望の灯りが残されていて、観客の心の中で救済されるエンディングが

用意されています。

ベルイマン作品のミューズであるハリエット・アンデルセンが、「不良少女モニカ」で

モニカを、「道化師の夜」でサーカス団座長の愛人という、強かで小悪魔的な魅力を

持つ登場人物を好演していて、生きるのが下手な主人公の困り顔を更に

クローズアップする効果を上げています。 

イングマール・ベルイマンは「不良少女モニカ」が公開される2年前に3度目の結婚を

していますが、ハリエット・アンデルセンと映画撮影中から男女の関係にあったようで、

「道化師の夜」で、サーカス団員を愛人にしながら、別れた妻に復縁を懇願して

拒絶される座長の惨めな姿に、自分自身を投影したのではないかと思います。

 

イングマール・ベルイマンとハリエット・アンデルセン

 

「不良少女モニカ」は、主人公とモニカが社会的な束縛から解放されて、ボートで旅を

しながら自由を満喫する描写が、ヌーベルバーグの監督たちに影響を与えたのが

頷ける程に若々しくて斬新で、70年前の作品が未だに新しさを失っていないのは、

映画的言語を持つ作品に出合うことが少なくなったからだと思います。

絶望的な気分になることが分かっているのに、偶にベルイマンの映画を観たくなるのは、

人間には破滅願望があるからだと思っていて、それに基づいて成り立っているものが、

芸術なのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 


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