ラストショー | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら


監督・脚本 ピーター・ボグダノヴィッチ

原作:脚本 ラリー・マクマートリー

撮影 ロバート・サーティース

編集 ドン・キャンバーン

出演 ティモシー・ボトムズ、ジェフ・ブリッジス、シビル・シェパード、

    ベン・ジョンソン、クロリス・リーチマン、エレン・バースティン、

    アイリーン・ブレナン

1971年 アメリカ


朝鮮戦争が勃発した翌年の1951年、
テキサスの片田舎にある寂れた町を舞台に、
思春期の若者たちの性にまつわるエピソードを、
ある時はコミカルに、ある時はシリアスに描いた青春映画で、
彼らの憧れの存在で、フロンティア スピリットを体現してきた
映画館主の死を通して、良きアメリカの終焉を見せた、
所謂オールディーズ物の偶像劇です。
本国では、アカデミー賞の作品賞他8部門にノミネートされ、
日本でも、1972年度のキネマ旬報ベストワンに輝いた名作ですが、
私的には、その年は『フェリーニのローマ』と『時計じかけのオレンジ』が
際立っていたので、その陰に隠れて、大まかにしか内容を覚えて
いなかったのですが、古ぼけた映画館で映し出される『花嫁の父』や
『赤い河』に描かれたアメリカン・ドリームには程遠い、
この街に住む人々の生気のなさが、モノクロの画面によって、
効果的に浮き立っていた事だけは、記憶に残っていました。
今回、本作を改めて見直してみると、ジョージ・ルーカスの
『アメリカン・グラフィティー』を筆頭に、その後数々作られてきた
オールディーズ物の青春映画は、この作品が原点であることが
分かりました。

古い映画を観ると、現在、確固たる地位を築いた名優たちの、
若かりし頃の勇姿に出会える楽しみがありますが、
当時の日本では知名度がなく、今だからこそ知りえることですが、
本作には、ジェフ・ブリッジスとエレン・バースティンが出演していて、
後にオスカーを受賞しただけの事はある、達者な演技を
披露しています。
他にも、本作でアカデミー賞の最優秀助演男優賞を受賞した
ベン・ジョンソンや同最優秀助演女優賞を受賞したクロリス・
リーチマンなど味のある役者さんが脇を固めていますが、
やはり何といっても、当時の私の心を鷲摑みにしてしまった
シビル・シェパードの小悪魔ぶりには、今回も、少年のように
胸を焦がしてしまいました。

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