監督 テンギズ・アブラゼ
出演 アフタンディル・マハラゼ、ゼイナブ・ボツヴァゼ、ケテヴァン・アブラゼ
1984年 ソビエト(グルジア)
『我々は不屈だ。決意を持てば、
暗い部屋でも猫を捕まえることが出来る。
たとえ、そこに猫がいなくてもだ。』
暗い部屋でも猫を捕まえることが出来る。
たとえ、そこに猫がいなくてもだ。』
ソ連崩壊前夜の1984年にグルジアで製作された、
スターリンをモデルにした独裁者による粛清の恐怖を描いた作品。
グルジアで生まれ、グルジア人の英雄であるスターリンを批判する
映画を、グルジア人の監督が撮ったことに不可解さを覚えましたが、
見る側の受け取り方しだいでは、スターリンを隠れ蓑にして、
KGBによる監視社会であった当時のソ連を描いたとも取れなくはなく、
当時ソ連の外相で、後にグルジアの大統領になるシュワルナゼの
お墨付きをもらって撮影しているように、監督の強かさが伺えます。
『ペレストロイカ』の象徴となった伝説的映画だそうですが、
現在のロシアは、貧富の差の増大や治安の悪化などソ連時代よりも
環境が悪化しており、グルジアでは権力によって抑えつけられていた
民族間の紛争が激化するなど、強い指導者を望む声が高まり、
スターリンが再評価されているのですから、世の中は思うようには
動いてくれません。
独裁者とその気弱な息子の二役を演じたアフタンディル・マハラゼの
鬼気迫る演技と、遊び心満載のテンギズ・アブラゼ監督の軽妙な
語り口とが絶妙なハーモニーを醸し出す、2度3度と観るたびに
作品の良さが滲み出て来る味わい深い作品です。