アルジェの戦い | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

監督 ジッロ・ポンテコルヴォ

主演 ジャン・マルタン

1966年 フランス/アルジェリア



飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら


















第一次インドシナ戦争の敗北により、
フランスがインドシナ諸国(ベトナム・カンボジア・ラオス)の
独立をジュネーブ協定で承認したことに刺激を受けて、
130年間フランスの支配下にあったアルジェリアで
FLN(国民解放戦線)が結成されて、
1954年にアルジェリアの独立戦争が勃発します。
アルジェリア戦争は、
コロンと呼ばれるアルジェリアのフランス人入植者と
アラブ系先住民との民族紛争に加えて、
アルジェリアの独立を承認しようとしたド・ゴール新大統領と
それに反発したフランス軍部との対立の側面を持ちますが、
本作では、前者の対立が描かれています。

出演者のほとんどが現地の素人で、
白黒フィルムのドキュメンタリータッチで捉えた映画手法は、
イタリアン・ネオレアリズモの傑作『無防備都市』を
髣髴とさせるもので、ラストの市民が蜂起する場面は、
本物の記録映像を見ているような緊迫感で圧倒されます。
コロンを狙ったFLNの爆弾テロやフランス軍部の拷問による
自白強要など、映画は、観客の感情を扇動すること無く、
客観的事実に基づいて描かれていきます。
フランス軍部は、テロリスト掃討作戦を展開するため40万人の
大量の兵士を投入しますが、それを指揮する将軍が、
反ナチスのレジスタンス運動の英雄であったという皮肉に、
戦争の不条理が込められています。
100万人の犠牲者を出して、
アルジェリアはフランスから独立しますが、
その後FLN内部での主導権争いによる内戦の危機や
社会主義経済政策の失敗に陥るなど不安定な社会に
国民の不満が募り、政情の混迷が今も続いています。
そして、映画の中の同じ光景が、イラクやアフガニスタンなど
世界中で繰り返されている事実。
40年前の公開当時は力強く映し出されていた、
映画の終わりを告げるFineのタイトルが、
今では虚しく見えるのです。


2009年3月6日)

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