群馬県吾妻郡嬬恋村の干俣という地区に来ましたよ。
万座林道とかろうじて読める看板を見つけました。
きょうはこの林道の先に眠る鉱山跡の遺構の探検に行きますよ。ミルクも一緒です。
この林道をたどっていけば、昭和38年、50年前に閉山となった上信鉱山の跡地につながるはずです。
>コウザンタンケンはわたしははじめてなのでワクワクします!
上信鉱山は、アルミニウムの原料であるロウ石鉱山として昭和18年に設立されました。
戦後は耐火材の原料となるハロイサイト鉱山として再興されました。
今回は、この山中に眠っていると言われている、ハロイサイト焼成炉の遺構を探しに行きます。
川を渡ります。静かなさびれた山間の集落から、山に入っていきます。
>ミルクさん、だいじょうぶですかぁ?
>なんのなんの!ハッハッ!
しかし早くも林道は、廃道といったほうが正しいんじゃないか?というような感じになってきました。
心配そうに振り返るグレース。
でも今日のミルクは違います!草をかき分けてヤル気まんまんでついてきます!
>クサが深くなってきましたよ。ママとミルクさんはひきかえしたほうがいいかも?
ミ>わたしだったらノープロブレムです、ねえママ?
マ>・・・
倒木など荒れほうだいの林道、いや旧林道を進んでいきます。
ミルクもしっかりついてきています。テンションが下がったママは最後尾をいやいや歩いています。
>がんばってくださいねー
道を見失うことはありませんが、ここへきて徐々に足元がぬかるんできました。
道を横断するように沢が流れています。
>ミルクさん、お水ですよー
>はぁ、み、水っ!
ちょっと休憩してのどをうるおしましょう。
>さあ、もうひとがんばりですねー
>がんばるよ~
だんだん道が不明瞭になり、熊笹が茂って歩きづらくなってきました。
>ねえ、あともうちょっとなんですよねぇ?
ちょっと頭に不安がよぎったころ、森の切れ目から目的のものが姿を現しました!
これが昭和31年製の竪型焼成炉と呼ばれるものです。
小川を渡って向うに行きます。ミルクとママはここから眺めるだけにします。
>さあ!あっちに渡ってよ~く見てみましょう!
深い森の中に、巨大なビール瓶のような遺構が鎮座しています!
慎重にがれきを乗り越えて、斜面を登ります。
双子のような焼成炉は、静かに闖入者を迎え入れてくれました。
ついに50年間山中に眠っていた焼成炉に対面しました!
奥にあるのが1号炉、手前が2号炉だそうです。
2つの炉は、ディテールがわずかに異なっています。
2号炉には目を引く大きなアーチのついた開口部があります。
アーチの中に、外壁とは異質な感じの幅広なレンガが積まれて開口部が形成されています。
なんか優雅な感じのするデザインですね。
奥の1号炉はこの穴が小さいですね。
2号炉裏側はこんな感じです。
つづいて奥の1号炉です。上のほうにある穴は鉱石の投入口だそうです。
こちらは2号炉、横に巻いてある金属の環の数が違います。
1号炉の開口部、さっきのと比べるとだいぶ小さいです。
内部を覗くと、焼成鉱石の跡と思われるものが残っています。
裏側に回り込むともう一つ同じ大きさの穴が開いています。
落ちているレンガを並べてみました。SHINAGAWAと書いてあるようです。
>くんくん、なんか歴史をかんじますね。
ここでレンズを広角に替えて、1号炉全景。
1号炉越しに見た、2号炉。
両者の識別点ともなっている、巻いてある金属のバンド。炉の補強でしょうか。
昭和31年製の1号炉、
そして昭和33年製の2号炉。
人里離れた山中に寄り添う2つの遺構は、
50年の雌伏の時を経て、
激動の戦後の時代を今に伝えています。
この遺構が、この自然とともに、
いつまでも後世に伝わって欲しいと思いました。
さあ、そろそろ帰ろうか。
時代の証人は、またゆっくりと眠りにつきました・・・
いつまでこんなとこで待たせるのよ!
と怒られてしまった、上信鉱山・焼成炉の探検でした。