皆さんは「釣りフェスティバル」や「フィッシングショー」に行きますか?
昔は「釣り博」と呼ばれていた釣具の総合展示会ですが、のちに「フィッシングショー」に名前が変更になり、今年は東京会場が「釣りフェスティバル」に名前が変わったようです。
しかし、地方で開催される展示会は「フィッシングショー」という名前が使われているようです。
私が東京在住だった頃、フィッシングショーに行くのが楽しみでした。
各メーカーの新製品が見られるというのも楽しみでしたが、バス釣りブームのせいで店頭で見かけることのないロッドを実際に触って、購入するロッドを選定するというのが主な目的でした。
そんなフィッシングショーで印象に残っていることが「deps奥村和正さんのサイン」なのです。
depsは今でこそ日本を代表する人気のルアーメーカーですが、立ち上げ当時、関東ではそれほど注目されていないメーカーでした。
というのも、初めてメディアに登場したのが、今は亡き「BASS WORLD」という雑誌だった思うのですが、そのコンセプトは「琵琶湖でデカバスを仕留める」というものでした。
そのせいか、「琵琶湖のローカルベイト」的な扱いを受け、霞ヶ浦をホームとしていた関東のアングラー達には見向きもされなかったのです。
でも、私は「B-Custom」という一風変わったスピナーベイトになんともいえない魅力を感じました。
なので、アメリカ製スピナーベイトが470円で買える時代、3倍近い値段の高級スピナーベイトをしこたま買い込んだのです。
でも、私の腕では思わしい釣果を上げることはできなかったのですが……
そんなdepsがフィッシングショーに初めて出展した時のことです。
私は友人のツテで業者しか入れない招待日に会場入りしていたのですが、朝一で見たいメーカーのブースを出たところ、近くにあったdepsのブースに立ち寄りました。
カタログを購入し、展示されているものを一通り見た後、次のブースに向かおうとしました。
すると、バックヤードから姿を現した人を私は見逃しませんでした。
「あ、奥村さんだ!」
私はそそくさと近寄り「奥村さんですよね?」と問いかけると、「あ? そうですけど……」と少し戸惑ったような表情をするのです。
まあ、知らない人に声をかけられたら誰でもそうだと思いますが、人気のバスプロ達とは明らかに違うリアクションが新鮮でした。
そんな奥村さんにカタログを差し出し、「サインください」とお願いしたところ、奥村さんは「えぇっ!」と驚いた後、しばらく『どうしよう……』って感じで悩んだ後、「めっちゃ普通の字ぃですよ!?」と申し訳なさそうにサインをくれたのです。
書かれたサインは本当に普通の文字で小さく「奥村和正」と書かれていました。
握手をしてお別れしたのですが、その時も『自分なんかでいいのかな?』みたいな感じで、ぺこりと頭を下げて去っていったのです。
もしかしたら、奥村さんが生まれて初めてサインをしたのは私だったのかもしれません。
ちなみに、翌年フィッシングショーに訪れた時、奥村さんを見つけてサインをお願いしたところ、当たり前のようにサラサラと書かれたので、メーカーとしても急成長したんだな……と実感したものです。