【番外編】

 

こんばんは。

企画事業部の山下です。

本日は番外編と称しまして、久保田万太郎にまつわる素敵な絵をご紹介いたします。

ということで、ただいま人形町Vision'sというギャラリーで開催中の「久保田万太郎と芥川龍之介」展に行って参りました!

 

 

これは阿佐ヶ谷美術専門学校が企画する「イラストレーターの二人展シリーズ」のひとつです。

ディレクターを務めるのはブックデザイナーの日下潤一さん

これまでも与謝蕪村、小林一茶などの作家や、神保町・ロンドン・名古屋などの土地をテーマに、たくさんのイラストレーターの方が絵を描いてきました。

 

「イラストではなく絵を描いて欲しい」と提示した日下さん。

「土地と文学」をキーワードに、感情や個人の物語、なにより対象とひたすらに向き合いながら生まれ出た作品がそこにはありました。

久保田万太郎を描いたのは、大高郁子さん

芥川龍之介を描いたのは、漆原冬児さんです。

なんとお2人は、「文学座有志による万太郎の世界」の公演もご覧になっているとのことで!!

今回展示のご案内を頂き、このタイミングにご縁を感じずにはいられませんでした。

 

ということで、今日はなんと、その展示の一部を大紹介いたします!!

是非ぜひご覧ください!

(関係者の皆様、この度はご協力頂き誠にありがとうございます。)

 

さて、やって参りました。ギャラリーの入口です。

おふたりの絵が向かい合うように展示されています。

遠近どちらでも楽しめる距離感です。

 

まずお迎えしてくれたのは、あざやかな緑に描かれた万太郎の一句!

大の猫好きだという大高さんは、今回の企画があがるよりずいぶん前にこの句を知り、すでにこの絵を描かれていたそうです。

 

そしてその下のラックには、文学座12月アトリエの会『かどで/舵』のチラシが!!

ありがとうございます!

 

 

向かい側にはおふたりによる、芥川龍之介と久保田万太郎にまつわるオリジナルマップ。

今回の企画に際し、幾度もゆかりの地を訪れたという大高さんと漆原さん。

龍之介と万太郎の人生の一部が浮かび上がってくるようでした。

 

 

色あざやかに、そして優しく寄り添うように、様々な視点から描かれた万太郎や浅草の風景。

特に俳句と絵が描かれた木目の短冊たちは、大高さんのあたたかなタッチが加わることで、ぐっとことばのイメージが広がりました。

 

そして!!

 

そして見て下さい!このびっしりと描かれた街並み!!

これは万太郎の文章にある浅草の緻密な描写をもとに、大高さんがいろんな時代の浅草をぎゅっと1枚にまとめたものです。

隣にいるのは…先生!?

 

地図が好きだという大高さん。

細部の細部にまでわたるこだわりがものすごかったです。是非肉眼でご覧頂きたいです!!

 

お隣にたっていたのは、なんとある時期原寸大の万太郎先生です。

その大きさ、153センチに62.1キロとのこと。思わずせいくらべをしてしまいました。

 

 

 

そしてこちらは漆原さんの描いた文豪たちと彼らの一句。

漆原さんの絵は、まるみと、温度と、かつ寂しさや憂いを感じさせるものがあり、心の奥底にある穴のようなものが静かに動かされる感覚になりました。

 

 

そとのあかりを感じながら、湯気と煙が同化した1枚。

彼らの声がきこえてきそうです。

 

そして芥川が眺めた大川(隅田川)。

ここを眺めると涙が出そうになるというほど、芥川にとって思い入れのある場所でした。

水面には何が見えていたのでしょうか。

どんなにおいを感じていたのでしょうか。

この場所からも、その独自の物語を広げたのでしょうか。

大川は彼の心の拠り所、原風景だったのかもしれません。

漆原さんの色づかいとタッチから、なんともいえぬ寂寞感に打ちひしがれました。

 

 

ここまで沢山載せて参りましたが、ほかにも紹介しきれないほどの絵が展示されています!

この日は作家の関川夏央さん※と俳人の高山れおなさんを迎えてのトークショーもありました。

(※初出掲載時、関川さんのお名前に一部誤りがありました。訂正してお詫びいたします。)

 

なかでも印象的だったのは、万太郎の戯曲・小説の特徴とも言える東京下町方言について。

彼の俳句は実になじみ深くわかりやすい言葉が基盤であるのに対して、戯曲や小説となると解説なしにはなかなか読めない独特の表現が多くみられます。

なぜ、必要以上と言ってもいいほど、彼はこの表現にこだわったのでしょうか。

袋物職人の商家に生まれ、さまざまな人間関係の中で明治・大正・昭和の怒涛の時代を生き、大震災や空襲でやけのはらとなる前の浅草に生まれ育った、万太郎の描く”東京”とは――

彼の「人生」を思い浮かべながら『かどで』『舵』という作品にあらためて触れると、また違った面白さが感じられるかもしれません。

 

ということで本当にボリューム満点な展示だったのですが、最後にとっておきのこちらをご紹介いたします!

 

大高さんが万太郎著「私の履歴書」等をもとに、万太郎の人生を自ら1冊の本にまとめた、「久保田万太郎の履歴書」

そのページ数なんと、288ページ(!)

ほぼすべての頁に大高さんのイラストが入っております。

このような作品は業界でも珍しいとのことで…。

ページをめくる度に、大高さんの思いを感じます。

万太郎を知っている方も、そうでない方も、これを読めばより久保田万太郎を味わえる1冊となっております!

300部の限定販売。お値段は1500円+税です。

いまこの本に出会えるのは、人形町のこの展示だけ!!

今週末の26日(土)までです!

 

■展示情報

Vision’s presents The Illustrators’ Gallery Vol.6

大高郁子+漆原冬児「久保田万太郎と芥川龍之介」

展示会期 : 2016年11月16日[水]〜11月26日[土]

開廊時間 : 12:00―19:00(最終日のみ17:00まで)

展示作家 : 大高郁子/漆原冬児

 

■関連リンク集

作家:大高郁子(おおたか・いくこ)

http://ikuko-o.sakura.ne.jp/index.html

作家:漆原冬児(うるしばら・とうじ)

http://tojiurushibara.com/tojiurushibaraillustration/top.html

 

ディレクター:日下潤一(くさか・じゅんいち)

http://www.bgx.jp/blog/?p=1642

★ページ下部に、先述の「久保田万太郎の履歴書」についてのご紹介があります!

 

企画:阿佐ヶ谷美術専門学校

http://www.asabi.ac.jp/letter/2016_1116_visions.php

 

ギャラリー:人形町Vision's(ヴィジョンズ)

http://www.visions.jp/

 

 

たくさんの方に、その目で直接、彼らの絵をご覧いただきたいです。

是非ぜひ、足を運んでみて下さい!

 

◆◇企画事業部 山下◇◆