…あまり聞きたい話ではないが。しかし、内容を反芻すると、夫というのは殺したくなるものらしい。世の中若者よ心せよ。
とまあ。面白くもない話の後は夜も面白くない。私はつまらない夜と言うのがすごくいや。だから、王将で餃子をテイクアウトして、仕切り直そうと駐車場に停めた車に行ったら、死んだ父が運転席で私を待っていた。
あーあ。またこんなことをして。死んでから10年になるけど、人当たりの悪かった父は地獄で如才なくなったとでもいうのか。
管理の鬼に渡りを付けて、時々私の所に帰ってくる。何も言わないけど。
だから私も何も言わず、助手席の、仕事の道具を後ろに片付けて無理矢理乗った。父は車を滑らせた。
タイヤが滑っていった。
10年前は私も若くて、この世には詰まらないものだらけだと思った。
だから父はこのまま私も地獄に連れていくのかな、と思ってわくわくしたんだけど、あにはからんや、ちゃんとアパートに連れていってくれた。
今夜も、ほかほか餃子の薫るなか、父は車を滑らせて、私を帰してくれた。
外に出るとひとりだった。
ああ、地獄で呵責されるんだろうなあ、と、私はビールを買い忘れたの 、思い出す。