●出版業界では「ゴーストライター」の存在は当たり前 

ぼく(株式会文道/藤吉豊)はもともと、出版社で雑誌の編集者をしていました。2001年に独立してからは、おもに、「ビジネス書のライター」として、本づくりに携わっています。

著者に取材をして、著者の思い、考え、ノウハウ、エピソードをうかがい、企画案にそって原稿を作成する。それがぼくの仕事です。
これまでに200冊以上、執筆のお手伝いをしてきました。

本づくりにおいて、プロのライターを使うことは、特別なことではありません。日常的です。
ぼくの肌感覚だと、ビジネス書の70%くらいは(もしかしたらそれ以上?)、ライターが関わっている気がします。

本の目次や奥付(おくづけ:本文が終わったあとに、書名・著者・発行者・印刷者・出版年月日・定価などを記したページ)などに「編集協力:○○○○」とクレジットがあったら、その人物が「執筆」を担当しています。

●ビジネス書は、分業・協業によって完成する

ライターを起用すれば、「書くのが不得意な方」や「書く時間がない方」にも出版のチャンスが生まれます。
ライターを介すことで、文章に客観性が保たれたり、「著者ひとりでは思いつかないアイデア」が引き出されることもあります。

「ライターが書いている」=(イコール)「著者は書いていない」ということではない、とぼくは思っています。
たしかに、実際に手を動かし、物理的にキーボードを叩いているのは、ライターです。でも、「手を動かしていない」という理由だけで、「これは著者の本ではない」「著者は書いていない」と批判するのは、少し、短絡的だと感じるのです。

ぼくの仕事は、あくまでも「聞き書き」であって、著者に「成り代わっている」のでも、「すり替わっている」のでもありません。
コンテンツ(企画やアイデア)を持っているのは、あくまで、著者。だからライターを立てても、その本は「著者の本」なのですね。

ぼくが書いた原稿は、基礎や土台のようなもの。その土台に、著者や編集者が加筆修正を施してさらに積み上げ、丁寧に磨き上げてから、本が完成します。

大阪城をつくったのは豊臣秀吉ですが、実際に建てたのは城大工(宮大工)です。城大工や宮大工の力を借りたからといって、「大阪城は秀吉が建てたわけではない」とはならないはず。本づくりも同じではないかな、と……。

映画『ジョーズ』は、スティーヴン・スピルバーク監督の作品ですが、脚本を書いたのは、ピーター・ベンチリーと、カール・ゴッドリーブの2人です。スピルバーグが書いたわけではないけれど、それをとがめる人はいないと思います。
 

ビジネス書も、同じ。分業・協業によって完成します。


本は、人手をかけてつくるものです。原稿は、みんなで書き上げるものです。
著者、編集者、ライター、校正者といったプロフェッショナルがチームを組み、それぞれが専門性を発揮する。役割をまっとうする。工夫をする。知見を出し合う。その結果として、読者の心に響く良書が生まれます。

●著者と、縦ではなく横の関係を築く

ぼくのことを、「ゴーストライター」と呼ぶ人もいます。

今から8年くらい前(2011年)、ある出版記念パーティーの席で、名刺交換をした女性からこんなことを言われました。

「ようするに、藤吉さんは、ゴーストライターってことですよね。ゴーストライターは、存在しないことが前提ですよね? どうして、いつまでも裏方に甘んじているのですか? 書く力があるのに、どうして、その力を自分のために使わないのですか? 人の文章を書いて、何が楽しいのですか?」

ぼくは別に、「裏方に甘んじている」つもりはなくて、むしろ、「裏方ウェルカム」です(笑)。

ぼくが持っている書く力を、著者と読者のために使う。ノウハウを持っている人(著者)と、ノウハウを知りたい人(読者)の間に「文章」を使って橋をかけるのが、ぼくの役割です。
ぼくにとって、表に出るとか、出ないとか、主役とか裏方とか、どちらでもいいことです。

おそらくこの女性は、著者とライターを「上下関係」で捉えていたのだと思います。「ライターは立場が弱い」とか、「ライターは、著者の下にいる」とか。

これまで、100人以上の著者とお仕事をさせていただきましたが、ぼくはただの一度も、「立場が弱い」と思ったことも、「下に見られている」と思ったこともありません。
なぜなら、ぼくがお手伝いをさせていただいた著者は、ひとりの例外もなく、

「ライターは、本づくりのパートナーである」

ことを認め、ぼくの立場を尊重し、ぼくの意見に耳を傾け、縦ではなく「横の関係」で接してくださっているからです。

●「守護霊」という意味でのゴーストライター

ぼく自身、この仕事をはじめた当初は、「ゴースト」と呼ばれることに抵抗があったのも事実です。
ゴーストって、なんとなく、うしろめたい響きがありますからね。

でも、今は違います。
「藤吉さんは、ゴーストライターですよね」と言われても、抵抗感を覚えることも、肩身の狭い思いをすることはありません。
「自分の役割」がはっきりとわかっているから、呼び名や肩書きは、もはや何でもOKなんです。

ぼくは特定の宗教を持たないので、「霊」のことはよくわかりませんが、ゴースト(霊)は、「悪い霊」ばかりではないと思います。
ぼくが「ゴースト」を名乗るのであれば、人を呪い恨む呪縛霊や浮遊霊ではなくて、著者や編集者を支えて守る、「守護霊」でありたい。

 

ぼくが身につけてきた書く力を、呪いの力にするのではなくて、人を励まし、支え、元気にするために使う。
それがぼくの「ゴーストライターとしての矜持」です。

 

株式会社文道/藤吉豊

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