第20回アジアン映画祭 2025年3月17日、3月22日上映。

 

舞台はバングラディシュの首都ダッカ。交通事故で車椅子での生活をしている母親を、一人で介護している24歳の女性サバが主人公だ。サバは一時働いていたが、今は介護が生活の中心になってしまっている。そのため家は貧しく、心臓の悪い母の手術費用を工面しようと苦労している。親戚はそんな彼女に冷淡で、唯一助けてくれた人物・アンクルとの間にもトラブルが持ち上がる。

 

監督の妻とその母親の関係に想を得たとマクスド・ホセイン監督は語っているが、本作は主人公と母親のパワーバランスが、時々反転するところが非常にリアルな描写になっている。母親を介護する人の輪は無く、どこまでもたった1人で対峙する主人公の姿が、気高く描かれれば描かれるほど問題が鮮明になり、悲しくなってくる作品でもある。

 

ケアの問題を描いていても、オープンエンディングなのではっきりと解決策を描いているわけではない。ただ、たまたま知り合った赤の他人が主人公に関わり始めるところに本作のメッセージがあり、サバに冷たく接する親戚は批判的に描かれる。そのへんの描き方が全く異なっていたのが、昨年、アジアン映画祭でコンペに出品された日本映画「スノードロップ」だ。吉田浩太監督も、親をただ1人で介護する女性・直子を主役に据えたが、全てを失った直子に最終的に関わるのは、公的な機関の人間だった。

 

監督の経験値や国の社会構造によって、様々な視点の介護のストーリーがあるが、実話を基にしたものには、それぞれ悲鳴にも似た主張が隠されている。今回、本作に受賞は無かったが、映画とビジネスが交差する映画祭のコンペを競う中にはこんな作品があり、観る者の知識になっていく。

(2024年/バングラディシュ/95分)

 

監督 マクスド・ホセイン

出演 メへザピン・チョウドゥリ

   ロケヤ・プラチ

   モストファ・モノワル