「ジョゼと虎と魚たち」の犬童一心監督で渡辺あや脚本。
ゲイの父親(田中泯)が経営するゲイのための老人ホームで
バイトをすることになるサオリ(柴咲コウ)
雨の日に会社までやってきた父・卑弥呼の恋人・春彦(オダギリジョー)
に誘われてのことだった。自分と母を捨てた父を恨み続けている娘、
父は父で、「こんな子使えないわよ」と最初は拒絶する。
実の子でありながら長い間の断絶があった。父にも意地がある。


はじめは無気力に日々を過ごしているように見えたサオリだが、
メゾン・ド・ヒミコ(老人ホーム)の人々との交流を通して、
感情を素直にぶつけられるように変わっていく。
喧嘩するくらいじゃないと人とは深く付き合えないよね。


この映画の登場人物はそれぞれ存在感がある。
生きてきた重み、自分らしさを大事にしてきた人だけが放つオーラ。
ヒミコの住人もそうだが若い二人、春彦とサオリも負けてはいない。
オダギリジョーはすこぶる整った顔だとは私は思わないのだが、
なぜこんなにセクシーなんだろう?雰囲気がある。
立っているだけで絵になる。


柴咲コウのサオリには、母亡き後一人で生きてきた凄みがあった。
メークアップならぬメークダウンとははじめて聞いたが、
眉毛とそばかすメイクで見事にブスに変身。
コスプレシーンではその分可愛かったけどね。
ちなみにダンスの振り付けは香瑠鼓。(モーニング娘。の振付師)
「ここで皆で一緒に暮らすのは楽しいことばかりだと
思っていたけど、死の順番を待つだけなのね」
という山崎さん(青山吉良)の言葉は印象的でした。


光輝くさくらんぼを見て、食べられないからあなた食べて
と山崎にいう卑弥呼。食欲=性欲を象徴したシーンなんだろうか?
自分の肉体の衰えを静かに見つめる彼は、
恋人の気持ちも恐らく見抜いていただろう。


まー個人的にはサオリの会社の専務細川(西島秀俊)が
彼が演じた今までの役では一番好きかも。
いそうじゃないすか、ああいう人。女たらしだけど(^^ゞ


「お盆」の場面を見て、親がいて祖父母がいて先祖を
たどっていくと自分のルーツにたどり着く。
歴史の流れの中のちっぽけな存在が自分であって
ということも考えたりして。


ゲイであることを公表できず、世間体で女性と結婚し子供をもうける。
それでも気持ちに嘘はつきとおせず、新たな道を歩き始めた男たち。
男たちを恨んで大きくなった子供たち。皆、犠牲者なのだ。
ただ夫婦の間のことは当人同士にしか分からないのだろう。
卑弥呼と卑弥呼の妻のように。


なんだかいろんなことを考えさせてくれる作品で
まだ頭の中でまとまってなかったりするんですが・・
ラストもとても良かったよね。男女の性を超えた友情
愛情ってありうるんだなって妙に確信したりしました。