出典・映画.com
先々週に「グリーンブック」を見てきましたが、同じく差別を描いた作品「ブラック・クランズマン」を見てきました。グリーンブックも見やすく楽しめる作品ながら差別についても考えさせられる名作でしたが、こちらもなかなか。
主役(原作の執筆者)ロンを演じたのは、デンゼル・ワシントンの息子、ジョン・デビッド・ワシントン。カエルの子はカエルですね、名演でした。
まず黒人でありながら警察官に志願するっていうのがすごい。(舞台は1979年のコロラド州)面接から差別の洗礼を受けるのですが、ロンはロンで負けていない。雑務を任されるのが嫌で、自ら「やりがいのある仕事ください」と署長に訴えます。
ある日新聞でKKK(クー・クラックス・クラン、白人至上主義団体)の広告を見つけて、電話で連絡し、「黒人差別」を意味するワード連発で、地域の代表に気に入られ、会いに行くことになる…という。そんなことできるの?って感じですが、彼は黒人英語といわゆる白人英語の発音が使い分けられると豪語。しかし顔を合わせてはまずいので、同僚の白人(ユダヤ系)刑事・フィリップ(アダム・ドライバー)に代わりに行ってもらうわけです。
見事白人のレイシストをだましおおせるロン。痛快ですね~。フィリップも何度か疑われつつも、なんとかかいくぐってメンバーに潜り込む。彼は自分自身が「ユダヤ人」という意識はあまりなかったけど、ロンを通しKKKを知っていくうちに、差別、また自分の民族性について考えるようになっていきます。
とはいえ堅苦しくなく面白く見られますよ。KKKのメンバーの関係性とか、実はメンバー不足で困っている様子とかね。KKKの上層部であるデビッド・デューク(トファー・グレイス)は政治家の道も虎視眈々と狙っている。KKKではおなじみの白い装束も着ずに、ふだんはスーツをスマートに着こなす紳士というのが意外でしたが、彼の奥底にはもちろん差別の意識がある。というか「黒人と白人を分離して考えたい」って発言がありましたね。「風と共に去りぬ」の乳母・マミーを例に挙げて、黒人は自分のしもべであるべきだという。
一か所ドキッとしてそのあとすっごい笑える名シーンがあったんです。詳しくは書きませんが、あれは秀逸だったなぁ。見てる方もスクリーンの中の彼らと一緒にびっくりして、そのあとホッとして笑っちゃうという。後ろの席の人も笑ってましたよ。いいですね、そういうのって。
この映画も実話ベースということですから、どこまで脚色してあるのか謎ですが…興味深いです。そしてラストに差し込まれる実際の映像。今も差別にまつわる暴動はアメリカの各所で起こっていて、傷ついている人たちがいる。いちばん監督が世界に訴えたかったことかもしれません。