樹木希林さんが出演され、黒木華・多部未華子という若い女優さんとの初共演も話題になった作品を見てきました。レディースデーなんで満席でした。まぁ途中寝ている人もいましたけどね^^;

 

近所の老婦人が身のこなし(お辞儀する姿)が美しい、「お茶の先生なんですって」と色めきだつ母親。そんな食卓での何気ない会話がきっかけで、典子(黒木)はいとこの美智子(多部未華子)とその老婦人・武田先生(樹木希林)のもとに茶道を習いに行きます。

 

ふくさの扱い方や、茶筅の使い方、畳の歩き方などなど細かい決まりごとがたくさんある茶道。すごいなぁ~気狂っちゃいそう…と内心思いながら見てました。武田先生曰く「まず形から入るんです。心は後から…。そうすると自然に手が順番を覚えて動いてくれるんです」と。

 

夏のお茶から冬のお茶と季節の移り変わりでお茶のたて方も違うんだ!と素人の私はそんなことも目からウロコでしたが、樹木さんの先生ぶり、ふくさの使い方には目を奪われました。かなり練習されたんでしょうか、お見事でした。

 

ある日「手が自然に動く」というのを自分自身で会得する典子。そこからはお茶をたてるのが断然楽しくなり、出版社でバイトをしつつお茶のお稽古も続けます。

 

 

最初は茶の湯のhowto的なことがメインかと思いましたが、後半から変わってきます。常に前を行くいとこの美智子に劣等感を感じつつ生活する典子。後輩に天才少女が入ってきて、自分自身の在り方にも疑問をいだきます。私生活でもよくないことが続き、ついに3ヶ月お稽古も休むことに…

 

久々にお稽古に顔を出した典子に武田先生は言います。「ただおいしいお茶を飲みに来る…それだけでいいじゃないの」そのもののいい方には、つらいことがあった典子をいたわる優しさにあふれていました。

 

 

静かな空間でお茶をたしなむ、そんなことを週に一度繰り返していくうち、典子は「注ぐときのお湯とお水の音の違い」「梅雨と秋雨の音の違い」にも気づくようになります。五感を研ぎ澄ます、それこそが茶の湯の極意にあり、1日1日が新しく、晴れた日は晴れたの日のよさ・寒い日は寒い日のよさを堪能する。「日日是好日」ということだとハッと気づきます。

 

後半は人の生死についても話が展開していき、作中の希林さんはお元気に見え「次の干支になったら私は100歳」と笑っておられましたが、そんな樹木さんもいまはこの世におられないんだなと思うと涙が出てきました。

 

監督は意外にも!(失礼)「さよなら渓谷」や「セトウツミ」の大森立嗣さん。こういう映画も撮られるんだとちょっと意外でしたが、ことに最後の自然の描写が美しく説得力もあり、素晴らしいエンディングだったと思います。話がちょっと飛びすぎと思ったところもなきにしもあらずですが、長い月日の話ですし実在の人物がモデルということなので、これも致し方ないかなと。

 

最初は「どういう映画なんだろう」と戸惑いつつ見ていき、そのうちに典子の経験を追体験して、心にじんわりとしみこんでいく、そんな作品でした。お茶やってみようかなとちょっと思ったりして(笑)

 

ちなみに横浜が舞台のようで「三渓園」もちらっと出てきますよ。

 

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