「シルバニアで遊ぼう」というときのお子様は、やたらトリッキーな設定を持ち出してくることが多い。
先日は、こうおっしゃった。「今日は、シルバニア村で食中毒が起こった、ってことね」
ひどい話だ。
おそらく昨晩、奥様が「おなかが痛い痛い」とのたうっていたからだろう。
それはともかくシルバニア村では、クレムちゃんの父親による雑なクッキングの結果、キュウリのサンドイッチが中ったようだ。
キュウリで食中毒になるのは、O157が原因であることが多い。「キュウリが原因だとすると、みんな死ぬ。おそらくシルバニア村の村人は全滅するね」とお子様に指摘すると、てきめんに機嫌が悪くなった。
「死なない。おなか壊しただけ」
わかったわかった。おなかが痛いだけね。
とはいっても、シルバニア村は大混乱だ。
一つしかないトイレの前には行列が生まれ、「ぎゅるるるる」「早くして」と阿鼻叫喚。もちろんこれらの擬音やせりふは、監督(お子様)の指示で、僕が発声するものだ。
道端では、ポニーちゃん母子がうつ伏して嘔吐し、自慢のロングヘアは吐しゃ物まみれだ(という設定)。
監督(お子様)から次々と僕に指示が飛ぶ。
「じゃあ次は、猿の赤ちゃんがゲ○したってことね。お父さん『おえー』って言って」
ひどすぎる。
こんな遊びに付き合うことは情操教育的によくなさそうだし、そもそも面倒くさくなってきた。投げやりに「おえー。うっ、苦しい。死んだ」と叫んで死んだふりをすると、お子様から叱責の声が飛んできた。
「もっと、遊びを大切にして!」
おもちゃ会社のキャッチコピーになりそうな、名言だなあ。