114 、上京五日目.11

衝撃的な守叔父さんの言葉を聞いた後、私の頭の中は、「どうやって、守叔父さんを病院へ連れて行こう???」との考えがグルグル、グルグル、回り続けていた。

そのため、上野公園から宿に送り届けてもらうまでの数時間、何があり、どこに立ち寄ったかなどの記憶がほとんどない。

部屋に戻って一人になり、椅子に腰かけて、机に向かうと少しだけ冷静になることができた。

一人で考えていても、埒(らち)が明かない。

誰かに相談しよう!

さて、誰に相談すれば良いだろう・・・?

ここでは、感情抜きに、事務的な対応をしてくれる相談相手が必要だと考えた。

まずは、iPadでブラウザを立ち上げ、Googleにてキーワード「認知症 相談」を検索した。

検索結果には、公的な相談窓口への相談をすすめてくれるものがいくつかヒットした。

たしかに、区役所や市役所などには相談窓口があるだろう。

続いて、「大田区 区役所」を検索した。

すると、宿の近くに区役所の出張所があることがわかった。 

「ツイてるな! ラッキーだ」と思った。

今日は、金曜日! そして、時間を見るとまだ業務時間内であったので、早速、出張所へ行く事にした。

出張所の窓口で、

 

「一人暮らしの親戚の叔父の様子が変で、
認知症のような感じなのですが・・・。 
どうしたら良いでしょうか?」



と問うた。

すると、対応してくれた区役所の方は、ほぼ即答で、
 

「地域包括支援センターへ、お伺いください。
そちらで、相談をされると良いと思います。」



との答えが返ってきた。
 

「支援センターとは、どちらにあるのですか?」

 

 

 

と聞いた。

すると、

 

 

「隣に老人ホームがありますが、その中にあります。

お名前を頂けましたら、こちらから、連絡入れさせていただきます。」

 

 

との事。

名前を名乗ると、すぐに地域包括支援センターへ連絡を入れてくれた。

そして、この後、即対応していただけることとなった。

区役所での滞在は、待ち時間もなくほんのわずかな時間ではあったが、区役所職員の方の応対は、この数日間、私の心の中にあった暗闇に、まばゆいほどの一筋の光を差し込んでくれたようにすら感じた。

お礼を言うと、すぐに地域包括支援センターへ向かった。

老人ホームの入口へ向かうと、そこは私の泊っている宿の玄関の真正面に相対した位置であった。

「数日前から何気なく見ていた建物が相談場所とは!」「これまたツイてるな! ラッキーだ」と思った。

建物内に入ると、案内図があり、奥の方に地域包括支援センターがあるようだ。

廊下を進むと、相談窓口があったので、受付の人へ

 

「先ほど、区役所の出張所からの紹介で、
こちらに伺いました。
連絡が入っていると思いますが、
本田と申します。」



と伝えた。すると、受付の人が、

 

「まず最初に、念のため、叔父さまのご住所をお教えください。」



との事、住所を伝えると。

 

「残念ですが、管轄が違いますね。
隣りの地域の地域包括支援センターへ
お伺いし、相談してください。
こちらから、先方には連絡を入れておきます。」



と言われてしまった。 「ツイてない・・・?  アンラッキー・・・?」

さすが東京! 人口が集中し過密している分、役所の出張所だけでなく、支援センターもたくさんあるのだろう!

場所を聞くと、守叔父さんの家からすぐの所に支援センターがあることがわかった。

離れた所でなくて良かったな・・・、「やはりツイてる! ラッキーだ」と思った。

それにしても、役所の職員の対応・レスポンスが早いな・・・。そして、無駄な言葉が全然無いな・・・。と感心した。

(つづく)