95 、上京四日目.6

「年齢当てクイズ」に満足した守叔父さんは、両腕で自分を抱くような格好で、腕をさすりながら、

 

「イキマスカ!」
( 行きますか!)



と言った。少し、風が強くなってきたために、肌寒く感じはじめており、丁度よい頃合いであった。

綺麗な風景を堪能できたことに感謝しながら、展望台を降りることになった。

 





守叔父さんは、江ノ島展望灯台エレベーターから降りると、下山ルートに進みはじめた。

下り坂とはいえ、守叔父さんの歩みは速く軽快であった。

歩くペースをゆっくりにして欲しかったので、私は守叔父さんに話しかけた。

 

「叔父さん、身軽だね!
足とか痛いところは無いの?」



すると、守叔父さんは自分が健康であることをアピールするために、

 

「オレ、コウヤッテ
(イツモ)アルイテル。」
(俺、こうやって
(いつも)歩いてる。)



と言って、より速いペースで歩きはじめてしまった。

会話しながらゆっくり歩こうと考えていたのが、逆効果となってしまった。私は、守叔父さんの歩きに感服し、

 

「凄いね!」



と伝えた。すると、逆に、

 

「アシ、イタイノ?」
(足、痛いの?)



と聞かれてしまった。

 

「痛くないけど・・・。
(叔父さん)元気だね!と思って。」



と少し、意味深に答えると、守叔父さんは少しゆっくりと歩いてくれた。 そして、笑いながら、
 

 

「サッキ、オトコノコニ
イクツカ キイタラ
ボクハ モウ 26サイ ッテ
オレハ 40サイ デショッテ
チガウヨッテ イッタラ
エーーダッテ。」
(さっき、男の子に
いくつか(年齢)聞いたら
僕はもう 26歳って、
俺は 40歳でしょって
違うよって言ったら
エーーだって。)



と言った。

展望灯台でのカップルとの「年齢当てクイズ」の話であった。 若く思われた事がホントに嬉しいようだ。

私の「元気だね!」という言葉から、守叔父さん本人が元気であり、「元気」「若い」と繋がり、「年齢当てクイズ」の話になったようであった。

「元気」という言葉が好きなようなので、「超元気、超元気だね!」と伝えると、

 

「ゲンキ!」



と言った後、またもや、スピードアップして歩きはじめてしまった。

私は守叔父さんと同じペースで歩くのをあきらめ、マイペースでゆっくりと歩くことにした。

守叔父さんは、どんどん先に歩いて行ってしまった。 

 





しばらくすると、先の自動販売機の横で守叔父さんが待ってくれていた。

私がたどり着くと、その自動販売機に小銭を投入し、
 

 

「ハイ、ドウゾ!」
(はい、どうぞ!)

 


と飲み物を勧めてくれた。 温かいものが飲みたくて、缶コーヒーを選んだ。

言葉にトラブルを抱えていても、サービス精神は変わらないな・・・。

コーヒー飲みながら、この後、どうするんだろう?と思っていたら、
 

 

「コンド、ドコイク?」
(今度、どこ行く?)

 


と聞いてきた、
 

 

「どこ、行きますか?」

 


と、質問に対して、質問で返事を返した。

すると、守叔父さんは、
 

 

「ドコデモ ドウゾ、
アッ、マタ、フネヲ、ピーット
ヤルヤツ イコウ!」
(どこでも どうぞ、
あっ、また、船をピューっと
やるやつ 行こう!)

 

 

と言った。

「船をピューっとやるやつ」とは、何であるか理解できなかったが、行き先は守叔父さんに任せることにした。

(つづく)