47 、上京二日目.21
トイレから戻ると、守叔父さんは、”飲み物”の自動販売機前に立って待っていた。
”温泉”とは、何だったのか聞こうと思いながら、私が近づくと、その自動販売機を指差しながら、
「タベモノ、イラナイ?」
(食べ物、要らない?)
と、バナナミルクを手渡しながら聞いてきた。そのため、”温泉”についての質問をすることができなかった。
守叔父さんの新たな一言によって、二つの疑問が頭に浮かんだ。
一つ目は、バナナミルク(飲み物)を買ってもらったばかりなのに、なぜ、別の飲み物を勧めてくるのか?
二つ目は、なぜ、「食べ物、要らない?」と、”飲み物”の自動販売機を指差しながら聞いてきたのか?
一つ目の疑問に対しては、バナナミルクを飲み終わった後に、口直しのための飲み物を勧めてくれたのかもしれない。つまり、叔父の甥っ子に対する優しい気配りと考えるならば理解できる。 それとも、バナナミルクを飲み物と認識していないのだろうか・・・?
二つ目の疑問に対しては、飲み物も”食べるもの”として、”食べ物”と表現したのかもしれない。
守叔父さんの発する言葉によって、疑問が解決するどころか、ますます増え続けている。
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自動販売機を目の前にした私は、どの様に返事すれば良いのか考えていた。すると、返答も聞かずに守叔父さんは、財布から小銭を取り出し、自販機の料金投入口へ入れはじめた。
そして、押しボタンの赤いランプが点灯し、
「ハイ、ドウゾ!」
(はい、どうぞ!)
と、欲しいモノを選ぶよう勧められた。
「タベモノ、イラナイ?」に関しては、これ以上深く考えず、”スルー”することにした。
片手にはバナナミルクがあるので、甘いものは要らないな・・・。と思い、いつでも飲めるペットボトルのお茶か水を探して、自販機の商品を見回した。
その自販機には、トクホ(特定保健用食品)認定のダイエット効果のあるお茶があったので、「これで痩せさせて頂きます!」と言いながら、ボタンを押した。そして、自分の太鼓腹を擦ると、守叔父さんは私のお腹を見て、
「オオキイネ!
(大きいね!)
と言いながら、笑ってくれた。
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エレベーターに乗り、上階の駐車場へ向かった。 エレベータに乗ると、守叔父さんは、
「コノアト、ドコイクノ?」
(この後、どこ行くの?)
と聞いてきた。
私の行き先や行動は、守叔父さん次第なので、守叔父さんの予定を再確認しようと思い、「(守叔父さんは)この後、仕事じゃないの?」と聞いてみた。すると、不思議そうな顔をしながら
「ソウナノ?」
(そうなの?)
と答えた。守叔父さん本人の予定にも関わらず、「そうなの?」と言われると、こちらとしては、面喰ってしまうしかない。聞き方が悪かったのかな?と思い、「この後、フリーなの?」と聞いてみた。すると、
「キョウハ、ワカンナイ」
(今日は、分かんない。)
との答えが返ってきた。これまた、予想外の答えが返ってきた。再度、聞き方を変え、「仕事に戻らなくていいの?」と聞き直した。すると、
「アァー、アァー、
チョットダケハ、
ヤラナイトイケナイコトガ アルケド。
ベツニ ヘイキハ ヘイキダケド
ドッチデモイイ。」
(あぁー、あぁー
ちょっとだけは、
やらないといけないことがあるけど。
別に平気は、平気だけど。
どっちでもいい。)
と、中途半端な答えが返ってきた。
守叔父さんの表情からは、私が要望すれば、その要望に対応しますという感じが伝わってきたので、
「(飛行機の)
写真を撮りたいので、
浮島町公園か、
京浜島つばさ公園か、
城南島海浜公園の
どちらかに行きたい。」
と伝えた。すると、
「ドコデモ イイヨ。
イキサキヲ イッテ。」
(どこでも良いよ。
行き先を言って。)
と、快諾してくれた。おかげで、もう少し守叔父さんと話ができる時間がとれそうだ。
(つづく)