先日、小松浩一著“アフターコロナの「最強の販売脳」のつくり方”を読んだ。著者は、61歳の流通ビジネスコンサルタント。本には、コロナ後の販売方法が書かれており大変参考になった。そのため、「あとがき」部分の抜粋を書こう。
『この時代に、「モノを売る」ことをどう語るかは、難しい問題です。新型コロナが求める「三蜜回避」は、多くの人が集まって住み、触れ合い、行き交うことで発展してきた近代産業社会とは正反対のことが求められています。
それは裏を返せば、人間の共同的存在とは何なのか、成熟化と富の偏在と環境破壊が極端にまで進んだ今の社会に対して、「このままでいいのか」と、まるでコロナが我々に問いかけている気さえします。
しかし、緊急事態宣言の発出と解除が繰り返される中、解除のたびに多くの人々が商業施設で自分たちを「解放」するかのように活き活きと買いまわる姿をみると、やはり人間にはリアルな店舗での直接的な接触体験が不可欠なのだと実感します。
それは、テレワークが続く中でいくら機能が進歩しても、何とももどかしく余白がない「ZOOM会議」とも通じるものがあります。こんな状況の中、昭和とも、平成とも異なる令和時代の“売る”とはどういうことなのでしょう?
(中略)
本書では、顧客第一=顧客目線に立った販売の基本の話から、マーケティングの小売業への読み替え、そしてデジタルへの理解を踏まえたうえで「令和に売る」とはどういうことなのかを考えて来ました。そこで見えてきたのは次の2つです。
◎店舗(売り手)の視点からは、「モノを売る」段階から「コトを売る」段階へ移行してきましたが、さらに売る人の個性やスキルを打ち出し、販売スタッフの一人ひとりに、“ファン”を集める段階(人を売る)へ、そしてその、“ファン”たちのコミュニティそのもの、人間関係そのものを売っていく段階(コミュニティを売る)へと進化してきました。
◎これをお客様(買い手)の視点から見ると、単に「お金を払ってモノやサービスを買う」段階から、「店や企業の取り組みに共感」し、「自分もメンバーとして参加・支援する」段階へ、そして「投資としてお金を出す」へとシフトしています。社会課題や自己実現のための役に立つ商品やサービスを買うことは、単なる「商品代金」ではなく、社会や自己への「投資である」ととらえる感覚になっているのです。 (後略)
私は40年余り、中小・零細企業に関する仕事をしてきた。それで分かったのだが、企業(又は店)は人の集まりであるから、感情があるということである。この感情を同じ方向に持っていくことで、大きな力を発揮する。これは、ワールドカップサッカー大会の日本チームを見れば分かるだろう。
すなわち、以心伝心で「ワンチーム」にまとまることだと思っている。その方法は、店によって様々だろうが、その方法を考えるのが、社長や専務、補佐役・従業員一人一人だろう。そして、その中には当然、アルバイトの人も入っている。なぜなら、顧客には、誰が社長なのか、誰がアルバイトなのか分からないからである。
つまり、「三方良し」である。三方良しとは、 「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」 の三つの良しで、売り手の都合だけで商いをするのではなく、買い手が心の底から満足し、さらに商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献できるのがよい商売であるという、近江商人の心得を表した言葉である。
例えば、帯広は豚丼の“まち”として有名であるから、この店のことを考えてみよう。ここでも「売り手」と「買い手」がいる。買い手は言うまでも顧客で、売り手は①作る人、②運ぶ人である。それから全道各地から車でやってくるので、③駐車場管理人などであろう。これらのスタッフが、ワンチームにまとまることが大切だと思っている。
企業が大きくなるためには、企業の総和を高めることで大切で、高めることに貢献した人の給料が一番高いのはいうまでもない。店が大きくなるためには設備投資が必要で、そのために社長自身が自宅を担保物件に入れたり、連帯保証人になったりする。社長は何も偉い人ではないが、社長の給料が誰よりも高いのは命懸けであるからである。
「十勝の活性化を考える会」会員