先日、「北海道新聞」(4面)に“人口減少社会の生き残り策”と題して、喜茂別町長と北大公共大学院教授 山崎幹根氏の対談記事が載っていた。喜茂別町は日本百名山の羊蹄山(1,898 m)のふもとにある人口2千人強の小さな町で、支笏洞爺国立公園に属し山頂は倶知安町・喜茂別町・京極町・真狩村・ニセコ町にまたがっている。二人の対談は、地方自治体の今後の在り方について本音で語っていたので大変参考になった。その記事の一部は、次のとおりである。
町長:『究極的には、自治体も残らないと思います。住民が減り続ける中、役場職員に従来通り給与を払っていくわけにはいかないし、経費節減で職員を減らし続ければ、やがて組織は成り立たなくなる。もちろん可能な限り存続への努力を続けるべきですが、おのずと限界は来ます。市町村合併や行政機能の移譲など「自治体じまい」をしたたかに準備する時期に来ているかもしれません。』
(中略)
町長:『現実には、市町村単独では維持できない業務が複数出てきています。喜茂別町をはじめ小規模自治体では、建設・土木関係の技術職員の確保が極めて厳しく、関連業務の一部は外部団体などに委託しています。周辺自治体との人材共共有や専門機関への委託を進めていくべきでしょう。』
教授:『自治体側から、そうした積極的な提案がないのが不思議です。負担が重く、なくしてほしい業務を道内の小規模自治体に尋ねたところ、「現状のままで良い」が最も多かったという調査結果もあります。』
町長:『道内地方ではいまだに、一つの自治体が全てのサービスを担う「完結型の成果」を求める傾向が強いからでしょう。「自分の代では現状を維持したい」と考える首長は多い。行政の機能やサービスなどを「なくしたい」と訴えたら選挙に負けてしまう恐れもあります。首長や議会議員の選挙の弊害ともいえます。』
教授:『地方自治体が長期的な視野に立って自治体じまいの検討に踏み込む場合、一番の課題は、住民に最低限提供するべき行政サービスの内容の選定です。
地域の限界を見据え、自治体が住民の同意を得ながらボトムアップで議論できるかが問われます。それが進まなければ、いよいよ国からトップダウンで指示が下りてくる可能性があります。今後5~10年は、こうした国と地方のせめぎ合いが続くと思われます。』
この記事を読んで、次のように思った。首長や議員は“ことなかれ主義”で、大局的に物事を考えずに自分の保身ばかりを考えている場合が多く、日本の国は少しも良くなっていない。日本は借金大国であるから、まずは“隗より始めよ”で、大切なことは着眼大局であると思っている。
人口減少のことであるが、国土交通省の予想では、日本の人口は2008年をピークに減っており、2050年には約1億人にまで減少する見込みで、その結果、高齢化率は約27%から約38%へ上昇していくと予測している。また、高齢人口のピークは2042年(3,935万人)で、2042年以降も高齢化率は上昇を続けると見込んでいる。
将来の人口減少を踏まえて行政は、いかにしてこれからの地方自治体をソフトランディングさせていくかだと思っている。そのためには行政が、地域住民の声を計画に織り込んでいくことが大切で、住民はその声を選挙にも反映させていくのが妥当だろう。
ただ、国政選挙の投票率で示されるとおり、投票率は低下している。その理由は、①選挙に無関心 ②平和ボケ だと思っているが、これではいけないので、これからは建前ではなく、本音で議論していかなければ問題解決にはならない。総論には賛成で各論には反対では、事は何も運んでいかないのである。
3年前、鈴木直道北海道知事(当時、夕張市長)の講演を聞いてきたが、夕張市民の中にはJR夕張支線の廃止に反対していた利用者がいたそうであるが、少ない乗客のために採算が合わず夕張支線を維持出来ないのである。JRに限らずこれからの公共投資は、国にお金がないから投資効果を考えてから実施してもらいたい。
十勝の話題になるが、日本の7番目の岐阜県と同じ面積を有する十勝に、約300億円を投じてゴミ処理場の建設が進められようとしている。東京都の人口1千3百万人を考慮すれば、実に1兆3,000億円にもなる大プロジェクトで、しかも地球温暖化を招くゴミを燃やす焼却炉が検討されているらしい。この施設にも、投資効果をよく考えてから実施してもらいたいと思っている。
「十勝の活性化を考える会」会長
【参考】(情報元:総務省)
