文武両道偉人列伝226【国立編】金山晋司 …山形大学大学院卒プロボクサー・日本スーパーライト1位
【サンケイスポーツ2003年10月19日】
プロボクシングの日本Sライト級タイトルマッチ10回戦(18日、後楽園ホール)。王者・江口慎吾(26)が効果的なショートのストレート、アッパーで大差の3-0判定勝ち。2度目の防衛に成功した。山形大大学院で黄砂を研究し博士号を持つ金山晋司(33)は、“ドクター王者”の夢ならず。また、6月にWBC世界Sフライ級王者・徳山昌守(29)=金沢=に挑戦して判定負けした川嶋勝重(29)が、判定勝ちで再起を飾った。
10回戦ボクサーになって初めてフルラウンドを闘った江口は「初防衛のプレッシャーでしたかね。反応しているつもりでも、ジャブを食っちゃって…」と苦笑い。挑戦者とは1年前にスパーリング。力の差を感じなかったため、危機感もあった。中重量級は世界の層が厚く、世界挑戦の実現すら難しいが、大橋秀行会長(38)は「スケールの大きな選手に育てたい。(米大リーグの)松井選手のように、海外で活躍できるボクサーに育ってほしい」と期待。
【読売新聞2003年11月13日】
日本ボクシング界初の“博士チャンピオン”は誕生しなかった。
後楽園ホールで10月18日に行われた日本スーパーライト級タイトルマッチ。理学博士号を
持つ挑戦者の同級1位・金山晋司(33)(国際)は、王者・江口慎吾(26)(大橋)に判定で敗れた。
14勝(11KO)1敗の高いKO率を誇る王者を、最終10ラウンドまでリングに立たせたが、
ジャッジは0―3の完敗だった。
1週間後の夜、試合後初めてトレーニングウエアに袖を通した金山に、ジムで会った。研究所での
黄砂の分析と論文執筆に忙しく、試合を振り返る余裕もない日々が続いていたという。まなざしは、
研究者に戻っていた。
しかし、次の言葉を聞いた時、リング上で見た獲物を狙うような鋭さが、目の奥によみがえったような
気がした。「(リングの上は)まさに非日常。違う世界に入って行く感覚だった」
試合のことで強く覚えているのは、熱いほどのスポットライトとテレビ中継のアナウンサーの声だと
いう。「あの世界に入ると、なかなかやめられない」。敗れはしたが、博士はボクシングの魅力の
核心に、踏み込んだのかもしれない。
年齢的には引退の選択肢も心をよぎる。しかし、第一線で現役を続けるかどうかはともかく、
研究所とジムの往復はこれからも続ける。(田上 幸広)