尾瀬御池は「夏が来れば思い出す」と歌われた国立公園の尾瀬沼などを目指すハイカ-にとって福島県側からの探勝口である。 大まかに尾瀬国立公園の自然はというと、尾瀬沼・尾瀬ヶ原の湿原植生と燧ケ岳・至仏山からなる高山植生に代表される。
御池には、国道352号をマイカ-で来る者と、鉄道により会津高原口下車のうえバスによる者とがあるが、年間を通じ10万人の入山者があるといわれる。以前はいまの沼山休憩所まで車が入れたが、自然を守るため・道路が狭いため、国や桧枝岐村では沼山休憩所の手前にあたる御池に駐車場や宿泊施設などを整備して、規制するようになった。
 降り立った御池は既に公園の特別地域にあたるもので、標高にして1450m、ブナ原生林は・オオシラビソ・ダケカンバなどの天然林と所々にある湿原など、風致探勝林にふさわしく、その面積はおおよそ200ha余りにわたる貴重なものである。 
拙著「ブナ林ふたたび」に記録したのは、ブナ林を全伐により利用した跡の林地が、いまどうなったかにあった。対して、今回は南会津森林管理支署によって風致探勝林として保存されてきたブナを主とする天然林を見た紀行である。 2023年6月26日、新潟県魚沼市銀山平から只見川に沿い、ほぼ60kを走って福島県桧枝岐村小沢平に入り、それから幾ばくもなく御池だった。 小沢平はかっての入植地であったが、尾瀬ヶ原や燧ケ岳のへの登山口でもある。 御池に落ち着いたのは夕方であったが、明日の好天が約束されたように、空は茜色に染まり村営宿舎などに営巣するイワツバメが群れ飛んでいた。
 翌日は、早朝から御池田代に始まり幾つかの湿原やブナ林内の遊歩道を歩いたが、ブナ・オオシラビソ・ダケカンバなどの上木、ハウチワカエデ・ムシカリ・タニウツギなどの中・下木が見られた。 わけても「ブナ平」ふさわしく樹齢300年に達するブナ林が見事であった。 湿原には、レンゲツツジ・バイケイソウの花と・サギスゲはすでに実を結び、周辺にはダケカンバの白い樹肌が目についた。 遊歩道を歩く限りでは、このようであったが、ブナはもう少し標高が低くなった1400m地点にかけても広がりが見られることだろう。 尾瀬沼や尾瀬ヶ原に比べてハイカ-は少ないが、豊かなブナに恵まれた国立公園特別地域内の風致林を堪能できた。 ホトトギス・ヒガラ・ルリビタキなど野鳥の声もたくさん聞こえました。 機会があったら皆さんも「ブナ平」をご覧になってください。
 昭和年代にブナを皆伐したその跡地がいまどうなっているかに関心があったなら「ブナ林ふたたび」をどうぞ。

 

 私は長らく国有林野業務に従事したことにより、ブナ林の失われる姿を見てきました。その後約半世紀が過ぎたいま、伐採後に植えられた針葉樹林とそこに進入した天然ブナの様子を踏査して、自費出版したところです。 
 内容はまえがきに続き、1部 ブナってどんな木、2部 東日本のブナの郷土にとられた施業方法といまの林分、3部 ブナ林施業によせる思い、4部 ブナ林の散策適地を載せた。 A4版、115ページ、全カラ-写真としました。
 沢山の方にブナ林の実状を知っていただければと思っています。
連絡先 MAIL : takei0108@ybb.ne.jp 
    TEL : 0288-26-4588 090-5425-1658 
    〒321-1274 日光市土沢1810-8
           武井宏之
    一報いただければ折り返し所要の連絡をいたします。


写真 1 御池湿原のバイケイソウ  

2023.6.25

 


 写真 2 御池湿原、手前白く見えるのはサギソウ 後方赤い花はレンゲツツジ  2023.6.25

 


 写真 3 御池の湿原 前方はダケカンバ その奥がブナ 

2023.6.26 

 

写真 4 ブナ平、ブナの大木 その1 下木はムシカリなど 

2023.6.26 

 


 写真 5 ブナ平、ブナの大木 その2  

2023.6.26  

 


写真 6  ブナ平、ブナの稚樹 

2023.6.26